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「背水の陣で挑む」下平監督の覚悟。豪華補強・長崎の進化した「2セット戦略」の下地作り

2025.01.31

2025注目Jクラブキャンプレポート#1
V・ファーレン長崎

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第1回は、山口蛍を筆頭に豪華戦力を補強した下平隆宏体制2年目のV・ファーレン長崎。「優勝の声が挙がるのも当然だと思う。監督として背水の陣で挑む」という指揮官が覚悟を語るJ2優勝候補が、沖縄キャンプで進める「2セット戦略」の下地作りについて伝えたい。

 キャンプ地である読谷村陸上競技場には、ときおり強い風が吹く。

 チームの資料やトレーニングの道具がピッチに舞い上がり、長いボールは風の影響を受けるため、出し手も受け手もイメージしたプレーを見せられないことも多い。現地でコメント取りをしていても、マイクに風防をつけていなければ再生音は風斬り音だらけで使い物にならず、実に取材者泣かせである。

 「風が強くて、お互いにやりたいことはできなかったのかな」

 1月21日に、札幌と沖縄キャンプ最初のトレーニングマッチを戦った下平隆宏監督は、苦笑交じりにそう語った。札幌戦の5日前にホームのピース・スタジアム Connected by SoftBankでU-18とトレーニングマッチを戦っているが、Jクラブとはこれが初めてである。各35分、計4本で戦ったゲームは、3本目にエジガル・ジュニオのゴールで1点を奪ったものの、4本目に2失点してトータル1-2で終えたが、下平監督の表情に落胆の色はない。

 「何%かで言えば60%ぐらいかな。失点を減らすことを目標にしている中で、危ないシーンもありましたけど、無失点で3本目まで来て、4本目にCKを起点に失点して、その後にガクっとした感じで追加点を許したことは選手に反省点として伝えました。4本目に練習生もいたとはいえ、あれはチームとしての失点なのでもったいなかったと思います。ただ、相手がどう動いてくるから、こうプレーするというところでは良い判断をする選手もいた。そこはポジティブだった」

 何しろ、戦力は豊富だ。昨年、J1に自動昇格した横浜FC、清水とともに3強を形成したチームは秋野央樹を除き主力陣が全員残留。そこへ山口蛍、エドゥアルドといった超のつく大物を含む11名の新加入である。無闇に焦る必要はどこにもない。

 U-18や札幌とのトレーニングマッチでやったように、選手の組み合わせと状態をしっかりと見極めて、チームをうまくマネジメントする。足りないものを作るのではなく、あるものをどう生かすか、連帯させるかが今季の肝なのである。

 だからこそ、下平監督はトレーニングマッチ後のコメントでこう続けた。

 「コンディションは徐々に差が減ってくるのかなと思います。ただチーム戦術のところでは選手間でばらつきがあるかなと。選手の数がかなり多いので、選手のレベル差も結構ありますから、そこは埋めていきたい……というか、マネジメントが大変かなと思っています」

下平監督(Photo: Hirohisa Fujihara)

注目点①豊富な戦力のマネジメント

 札幌とのトレーニングマッチでは、昨年の戦いを踏まえたいくつかの注目点があった。1つ目は豊富な戦力をどう起用するのかである。……

Profile

藤原 裕久

カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。

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