ぶれない。邪魔しない。嘘をつかない。松橋力蔵監督がアルビレックス新潟に根付かせたもの
去り行く監督たちのレガシー#5
松橋力蔵(アルビレックス新潟)
2024シーズンのJリーグが終わり、惜しまれつつチームから去っていく監督たちがいる。長期政権でチームの黄金期を作り上げた者、独自のスタイルでファンを魅了した者、困難なミッションから逃げず正面から向き合い続けた者……リスペクトすべき去り行く監督たちがそれぞれのクラブに残したレガシーを、彼らの挑戦を見守ってきた番記者が振り返る。
第5回は、J2で燻っていたチームをJ1のステージへと導き、今季はルヴァンカップでもファイナル進出を成し遂げたアルビレックス新潟の松橋力蔵監督。その実直な性格と、ブレない指導スタイルで、選手からもサポーターからも愛された指揮官の実像を、野本桂子が映し出す。
築き上げた「新潟スタイル」。相手の指揮官にも憧れられる監督
2021年、横浜F・マリノスから、コーチとしてアルビレックス新潟にやって来た“リキさん”こと松橋力蔵監督。コーチとして1年、監督として3年。常にまっすぐ誠実に、選手たちに向き合い続けた。アルベル前監督が種をまき、芽吹かせたポゼッションサッカーを育て、折々で勝利の花を咲かせながら、新潟に根付かせた。
監督就任1年目の2022年はJ1昇格&J2優勝へと導いた。23年にかけては、本間至恩(クラブ・ブルージュ/現・浦和レッズ)、伊藤涼太郎(シント=トロイデン)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)の3人を海外へと送り出し、J1昇格初年度は、18チーム中10位と手ごたえを得た。
就任3年目となる2024年は“てっぺん”を目標に掲げてスタート。J1で20チーム中16位と苦戦したものの、ルヴァンカップはクラブ初の決勝へと導き、“てっぺん”まであと一歩のところまで迫った。また今季のパス数は2万2280本、パス成功率は84.4%で、いずれもリーグ1位。1試合平均ボール支配率は、1位の横浜FM(57.6%)に次ぐ2位で56.6%。数字にも築き上げた「新潟スタイル」の特徴が現れている。……
Profile
野本 桂子
新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。