レノファ山口FCの躍進を引っ張った22歳差のWキャプテン。河野孝汰の成長と山瀬功治の背中
【特集】チームリーダーの在り方#4
河野孝汰&山瀬功治(レノファ山口FC)
サッカーチームが一つの集団としてまとまるには監督の力はもちろん、選手たちの中にもリーダーが必要だ。カリスマ性、コミュニケーション力、人格、仲間からの信頼、経験や実績……チームリーダーには様々なものが求められ、様々なタイプがいる。Jクラブのキャプテンたちの実情を探ることで、複雑性の高いサッカーというスポーツのリーダーシップの在り方について考えてみたい。
第4回は、レノファ山口FCが敷いた22歳差のダブルキャプテン体制を総括。J2で前半戦を5位で折り返す2024シーズンの躍進を引っ張った河野孝汰の成長と山瀬功治の背中に、ピッチリポーターのトクダトモヨさんが迫る。
「めちゃくちゃびっくりした」Wキャプテン誕生秘話
レノファ山口FCの今年のホーム戦は雨続きだった。キャプテンの1人、山瀬功治はボールを蹴ると水しぶきがあがるほどに水分を含んだピッチで戦う仲間たちにスタンドから視線を送っていた。メンバーから外れてしまった時は必ず同じ席に座って戦況を見守る。この日も、そばの手すりに無造作に畳まれたビニール傘をかけて、誰と会話をするでもなく眼前の試合に見入っていた。
「試合はフラットに見ています。でも(悔しい気持ちは)ゼロじゃないかもしれないですね。試合会場で知り合いやサポーターに挨拶するじゃないですか。ちゃんと対応しようと心がけるけど、そこまで愛想良くはできなかったかもしれないです」
キャリア25年目で43歳を迎えたベテランは、感情を隠すのが得意ではないと付け加えながら「嫁さんに怒られちゃうんですけどね、プロはそこもちゃんとしないとって」と、冗談めかして苦笑した。
そのピッチにはもう1人のキャプテン、河野孝汰の姿があった。本職はFWだが、今季は主にチーム戦術の肝である左サイドハーフを担当。レノファのアカデミー育ちでは初の、そしてクラブ史上最年少、当時20歳でのキャプテン抜擢だった。
「鹿児島キャンプ最終日の前日に監督室に呼ばれて、『何か戦術の話かな?』と思ってドアを開けると、スタッフの人がたくさんいて……『これは何か違うぞ?』と察して(笑)。すると、『キャプテンをやってほしい』と告げられて……最初はめちゃくちゃびっくりして『は、はい……』という感じでした(笑)」
Jリーグデビューは2019年。高校1年生だった。早くからプロ選手たちとプレーしていたこともあって実年齢よりも少し大人びていたが、リラックスした状態で就任の経緯を話す笑顔は、やはり年相応のものだったのを覚えている。
「でも常にチームに貢献したいという想いはあったので『やらせてください』と言いました」
理想のキャプテン像はない。そう最初に語っていた河野が主将として、日々、意識していたのは『自分の成長がチームの成長に繋がる』というものだった。
今季、レノファはキャプテンを2人体制とした。その理由を就任1年目だった志垣良監督はこう語る。
「どうすれば勝ち点3が取れるかと考えた時、チームへの想いやクラブへの愛着心が一番強いのは孝汰だと感じたので、その気持ちを出して戦ってくれたらと。その隣に功治のような偉大な選手がいてくれれば、孝汰もチームも成長できるのではと考えて2人に決めました」
特に役割は設けなかった。ただ、「孝汰を前線に出して、僕は一歩引いた立場でいようと思っていた」という山瀬の言葉通りの体制となった。
「期待が良いエネルギーに」河野の成長を促した主将という立場
前線を任された河野は、これまでも歴代キャプテンが担ってきたという試合前のかけ声に長らく悩んでいたらしい。……
Profile
トクダトモヨ
山口県出身のフリーパーソナリティ。2017年よりDAZNでJリーグ公式映像のピッチリポーターを務める。「準備力」がストロングポイント。エフエム山口『GO!GO!RENOFA』インタビュアー、クラブ公式YouTubeチャンネルで配信しているマッチプレビュー番組『RENOFANISTA』ナビゲーターを担当するなどサッカー漬けの毎日を過ごしている。