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デ・ゼルビからヒュルツェラーへ監督交代のブライトン。ルターと対角フィードが三笘を生かす[2-3-5]ビルドアップの仕組み

2024.11.22

【特集】欧州&Jリーグの
複雑化する最新ビルドアップ解析
 #7

ブライトン

「ハイプレスvsビルドアップの攻防」は現代サッカーの基本としてすっかり定着し、日進月歩でブラッシュアップが繰り返されている。近年はロベルト・デ・ゼルビが率いたブライトンが見せた敵のハイプレスを誘引してその裏を取る「疑似カウンター」が注目されたが、多くの監督たちは知恵を絞って新しいアイディアの開発を進めている。今特集では、24-25シーズンの欧州サッカー、2024シーズンのJリーグの注目クラブを対象に、ビルドアップ戦術にフォーカスして分析してみたい。

第7回は、今夏にデ・ゼルビからファビアン・ヒュルツェラーへと監督が交代したブライトンをピックアップ。新戦力ジョルジニオ・ルターと対角フィードが三笘薫を生かす[2-3-5]ビルドアップの仕組みを読み解く。

 2022-23シーズンにブライトンをクラブ史上最高順位のプレミアリーグ6位に導き、同史上初のEL出場権をもたらしたロベルト・デ・ゼルビ前監督。その功績は結果だけにとどまらず、「誘引→疑似カウンター」という独自のスタイルを世界最高峰の舞台で披露したことで各国のチーム、指導者に大きなインパクトを与えた。

 デ・ゼルビ前監督下のブライトンで十八番だった「誘引→疑似カウンター」は、基本陣形の[4-2-3-1]をボール保持局面で[2-4-4]へと変え、4バックとダブルボランチのビルドアップ隊を用意した状態でGKまたはCBが懐にボールを置いて持つことから始まる。相手のプレッシングを誘き出してはダブルボランチの接続タイミングの妙でライン間へボールを届けたり、ライン間の味方に相手CBが引っ張り出される格好となればDFライン背後へのアクションで一気に局面を加速させたりと、ゴールという一番の目的地へ最短ルートで向かえるピッチ中央からの前進を狙う。内側のスペースを閉じられ気味であろうと細かい縦のボールを出し入れしながらビルドアップ隊6人で中の経路を探り、ライン間や奥のスペースへボールを供給できるタイミングで一気に加速していく様子は、デ・ゼルビの哲学の一貫性が感じられた。

 しかし昨季は過密日程で負傷者続出にも苛まれELでラウンド16敗退、プレミアリーグでは11位に低迷したほか、クラブとの補強戦略の相違も報じられてデ・ゼルビは退任。その後を継いで今夏に誕生したプレミアリーグ最年少監督が、ザンクトパウリをブンデスリーガ2部優勝に導いた31歳のファビアン・ヒュルツェラー新監督だ。

 盤面を縦に伸ばしてまずはピッチ中央からの前進を狙うのが前体制だとすれば、新体制でブライトンはよりピッチを広く取ることで自分たちが使えるスペースを作り出しながら前進の糸口を探っている。システムこそ同じ[4-2-3-1]がベースだが、ボール保持局面になるとダブルボランチがアンカー役とインサイドハーフ役に分かれて[2-3-5]の陣形を取るのが特徴的だ。

デ・ゼルビ前体制との違いが表れるSBとWGの役割

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Profile

keita

2000年生まれ。宮城県生まれ神奈川県育ち。サッカー指導者とベガルタ仙台サポーターと欧州サッカーウォッチャーの三刀流。グラウンドとSNS上でサッカーについてのインプットとアウトプットを繰り返す日々を送っている。