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徳島在籍14シーズン、35歳のGK長谷川徹の周りには、なぜ人が集まるのか?

2024.10.22

【特集】チームを陰から支えるベテランGKの矜持#2
長谷川徹(徳島ヴォルティス)

GKは1人しかピッチに立つことができない特殊なポジションだ。注目されるのは、ピッチ上で輝く正守護神。それ以外のGKたちにスポットライトが当たることは少ない。1つのクラブにすべてを捧げ続けてきた者、数多くのクラブを渡り歩いた経験を持つ者、常に上を目指し続ける向上心を忘れない者……国内のチームを陰から支えるベテランGKの矜持をぜひ知ってほしい。

第2回は、徳島ヴォルティスに14シーズン在籍してきた長谷川徹。35歳のベテランGKの周りには、なぜ多くの人が集まるのか?――クラブを追い続ける柏原敏が本人と関係者の証言から綴る。

 今季で設立20周年を迎えた徳島ヴォルティスに14シーズン在籍する最古参。クラブ初のJ1昇格争い、クラブ初のJ1昇格とJ2降格、クラブ2度目のJ1昇格とJ2降格など、クラブ史の年表に掲載される多くを当事者として知る選手。

 その名は、長谷川徹。

 本特集は「陰から支える」という切り口での寄稿依頼ではあったが、前提として長谷川徹が長谷川徹たる由縁はベテランと呼ばれるようになった現在もGKとしてシンプルに表舞台で先頭に立つことができるプロとしての実力がある。

2020シーズンに史上初のJ2優勝を成し遂げた徳島。長谷川は後列右から1番目(Photo: ©T.VORTIS)

中河GKコーチが絶賛するシュートストップ

 特筆すべきはシュートストップ。

 「あの反応はやっぱりすごい。年齢とともに多少は反応速度が落ちていくし、全盛期に比べると速度自体はやっぱり落ちているところがあるとは思う。でも、その分を予測や経験でカバーできている。とにかく止める」

 そう話すのは「ピーさん」や「ピーコさん」の愛称で、チームからもファン・サポーターからも慕われる中河昌彦GKコーチ。今季の長谷川にリーグ戦の出場機会はまだ巡ってきていないが、「出場の可能性は普通にある。競争にいる」(中河GKコーチ)と言う。

 そして、その競争に誰よりも刺激を受けているのが12試合連続で先発出場をしている田中颯だ。

 「あの人の熱やアツいものを湧き上がらせることが俺の仕事だと思っていて、俺は徹くんを休ませないし、どんどん話も聞きに行っているし、俺はあの人と勝負をしたいと毎日思っています。なにくそ、と思わせられるように毎日やっています。だから徹さんって感じじゃなくて、徹くんって感じです。あの人をライバルだと思っています。あの人と競争できることが自分にとって幸せなことで、まだまだ自分が劣っていることが多いので追い抜きたいと思っています」(田中)

田中と手を繋いで万歳する長谷川(Photo: ©T.VORTIS)

「レジェンド」と呼ばれる2つの条件

 長谷川もいつかはレジェンドと呼ばれる日が来るのだろう。

 どんな人間がレジェンドに相応しいかを考えたときに2つの条件が浮かんだ。……

Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。