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浦和を支えるホイブラーテンの謙虚さ、向上心、そして適応力。北欧とJリーグは好相性

2024.09.13

【特集】Jで活躍する外国籍選手の条件#4
マリウス・ホイブラーテン(浦和レッズ)

若手を中心に海外移籍が加速し、選手編成の流動性が増している近年のJリーグだが、外国籍選手の国籍もヨーロッパや南米だけでなく、アジア(+オセアニア)、中東、アフリカなど多様化している。様々なバックボーンを持つ“助っ人たち”が日本に渡ってくる中で、Jリーグで活躍できるのはどんな選手なのだろうか? 各ケーススタディを掘り下げつつ、通訳や代理人の考察も交えて迫ってみたい。

第4回は、浦和レッズのACL制覇を支えたマリウス・ホイブラーテン。アレクサンダー・ショルツとアジア屈指の守備ラインを形成したノルウェー人CBが、すぐさまJリーグにフィットした秘密を解き明かす。

「王子」は突如現れた

 北欧はノルウェーから颯爽と現れた守備者は、気がつけば「王子」の称号を得ていた。チームに合流したのは、2023年の2月3日。すでに沖縄キャンプは終了しており、18日の開幕まであまり時間はなかったが、当然のように開幕スタメンと飾ると、アレクサンダー・ショルツとのコンビを確立。以後、掟破りの外国籍CBコンビは浦和の堅守を支える屋台骨となった。

 合流もそうだが、加入が発表されたのもキャンプが始まってから1週間が経過しようかという1月17日と遅かった。そのため、当初は「海外クラブと移籍交渉を進めているため、トレーニングキャンプには参加いたしません」(浦和公式)とのことでチームを離脱した岩波拓也の穴埋めで獲得されたとの見方もあったが、どうも違ったようだ。

 2022シーズンを終えてからしばらくの浦和のスケジュールは不透明で、シーズン初戦がACL2022の決勝戦ないしクラブW杯2022になる可能性があった。最終的にはクラブW杯には21王者アル・ヒラルが出場し、そのアル・ヒラルと戦うACL決勝は5月となったが、シーズン序盤に強大な相手に立ち向かわねばならいことに変わりはなかった。そこで、マチェイ・スコルジャ新監督は決戦を乗り切るべく守備を基盤としたチーム構築を企図。新たなCBの獲得も早い段階でオーダーがあったようだ。

 そうしてホイブラーテンに白羽の矢が立ち、外国籍CBコンビでJとアジアを戦うことになったが、これが結果的にも内容的にも大当たりだった。GK西川周作、SBの明本考浩、酒井宏樹を加えた守備陣はJリーグ歴代でも屈指の鉄壁ぶりを示し、ショルツ、ホイブラーテン、西川がJ1ベストイレブンに選出された。

「サッカー観が似ている」北欧CBコンビの強固な補完関係

 浦和加入時のリリースでは「左利きで、スピードもあり、長短のパスでゲームメイクもできるセンターバック。真のプロフェッショナルとして、ピッチ上での振る舞いやリーダーシップにも期待できる」と紹介されたホイブラーテン。キャンプ終了後に加入したこともあり、プレーを見る機会がほとんどないままに開幕を迎えることとなったが、すぐに実力者であることを示して見せた。チームが連敗スタートだったにもかかわらずだ。

 筆者のTwitter(現:X)を見返してみると、「マリウスすごいのでは?(第1節)」、「やはり本物では。ショルツが2倍や(第2節)」という頭の悪いツイートをしていた。外国籍枠をCBで2つ使ってしまっていいのだろうか、という疑問は早くも、この時点で霧散してしまっていた。

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Profile

ジェイ

1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。