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「数字ではJ2上位」山形の希望を背負う土居聖真。元“鹿島の8番”が導く「新しい世界」

2024.08.16

【特集】Jリーグ夏の新戦力、救世主は誰だ?
#6 土居聖真(モンテディオ山形)

今夏も動きが活発化している移籍市場。経験をもたらすベテランから即戦力として期待を背負う実力者に武者修行で再起を図る若手まで、各Jクラブが補強した救世主候補たちの物語を番記者がお届けする。

第6回は鹿島アントラーズ一筋を貫きながら、出身地を本拠とするモンテディオ山形にキャリア初の移籍を果たした土居聖真。32歳で迎えている新章を番記者の佐藤円氏と読む。

 土居聖真の鹿島アントラーズからの完全移籍がモンテディオ山形からリリースされたのは7月25日。生まれ故郷の山形を離れたのは、小学校卒業のタイミング。そこから鹿島のアカデミーに入り、ジュニアユースとユースで6年、トップチームに上がって14年目。約20年間、鹿島一筋だったサッカー人生には、32歳にして新たな章が用意されていた。土居にとって移籍が初めてなら、J2でプレーするのも初めて。地元のクラブとはいえ、面識のあるチームメイトもほとんどいなかった。

 移籍リリースがあった翌日、土居は午前中には山形の全体練習に合流し、午後には記者会見が行われた。場所は、試合が行われるNDソフトスタジアム内の会見場。シーズン途中の加入は囲み対応のみで済まされる選手がほとんどの中、記者会見の場が設けられたことのみをとっても、クラブ側の期待の大きさをうかがい知ることができた。

 その記者会見には渋澤大介強化部長のほか、相田健太郎社長も同席。テーブルには青と白のチームカラーのカーネーションを中心とするフラワーアレンジメントが装飾され、会見後にはユニフォーム上下を着用してのフォトセッションが、スタジアムのピッチ内で行われた。その様子は、クラブ発信のSNSや山形県内の各メディアで取り上げられ、8月3日、J2リーグ再開のアウェイ・ファジアーノ岡山戦(第25節)、さらには、山形の土居として初めて迎える11日のホームゲーム・徳島ヴォルティス戦(第26節)へのプロモーションとしても大きな効果を挙げた。なお、土居は徳島戦の週には、夕方のローカル情報番組2局に出演。早くも“チームの顔”として多忙な日々を送っている。

渋澤強化部長と相田社長を両脇に、加入会見でマイクを取る土居(Photo: Madoka Sato)

「いつかは山形で」を今叶えた強化部長と監督の熱意

 土居の山形移籍について、噂レベルではかなり以前からあったように記憶している。山形サポーターや山形県民の「いつかは山形で」という強い期待や希望がそうした空気感を形作っていた側面もあるだろうが、実際にここ数年、山形からの打診が代理人を通じてあったことは、土居自身が明かしている。

 今回も代理人から「山形から正式なオファーがありそうだけど、どう思う?」と聞かれ、当初は「正直、まだ戻らないかなあ」と考えていたそうだ。ただ、「話だけでも」とセッティングされた渋澤強化部長と面会の席で、想像以上の熱意をぶつけられた。渡邉晋監督ともオンラインでミーティングの場が設けられ、思いを伝えられた。

 「会って話して、やっぱり熱意だったり、山形のサッカースタイルだったりというのを聞いて、本格的に揺らぎましたね」。まもなく、土居は「本当に簡単な決断ではなかった」移籍を決心する。……

Profile

佐藤 円

1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。