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「凪の精神」で奪った長崎戦のデビュー弾。水戸の地で中島大嘉の“大嘉の快進”が始まる

2024.08.13

【特集】Jリーグ夏の新戦力、救世主は誰だ?
#3 中島大嘉(水戸ホーリーホック)

今夏も動きが活発化している移籍市場。経験をもたらすベテランから即戦力として期待を背負う実力者に武者修行で再起を図る若手まで、各Jクラブが補強した救世主候補たちの物語を番記者がお届けする。

第3回は、北海道コンサドーレ札幌から藤枝MYFCに育成型期限付き移籍し、この夏から水戸ホーリーホックへ活躍の場を移した中島大嘉。V・ファーレン長崎とのデビュー戦でさっそくゴールを決めた22歳の大器は、降格危機にあるチームに“強烈な刺激”を与えている。

 8月9日に行われたJ2第25節長崎戦。1対1で迎えた後半4分。ボランチから縦パスを受け、バイタルエリアへボールを運んだ草野侑己が前線にスルーパスを送る。ダイアゴナル(斜め)の動きで走り込んできたのは7月19日に水戸に加入したばかりの中島大嘉。体幹の強さを活かしてDFを振り切り、そのまま豪快に左足を振り抜いてゴールネットに突き刺した。後半開始にピッチに投入されてからわずか4分で決めた決勝ゴール。22戦負けなしの長崎から5試合ぶりの勝利を引き寄せる鮮烈な水戸デビューを飾った。

 「持ってますよね! これが中島大嘉です」と満面の笑みを見せながら、「今日から『大嘉の快進』が行われようとしています。その狼煙を上げられたと思っています」と胸を張った。

西村GMは「数年前から目をつけていた」

 中断期間前の第24節終了時点で水戸は降格圏の18位と同勝点の17位に低迷。失点数こそリーグで10番目に少ない29で抑えることができていたものの、得点がリーグで5番目に少ない22と得点力不足という大きな課題を抱えていた。しかも、それまで屈強なフィジカルを活かしてCFとして攻撃を引っ張ってきた寺沼星文が左膝前十字靭帯損傷・左膝内側側副靱帯損傷という大ケガを負ったことが7月3日に発表された。J2残留のためにも、ストライカーの獲得は急務となっていた。

 そこで白羽の矢が立ったのが中島だった。

 「数年前から目をつけていた」と西村卓朗GMは明かす。実際、水戸は21年にエリートリーグで札幌と対戦。高卒1年目にして驚異的なフィジカルの強さを活かしたプレーで相手ゴールに襲いかかる中島は、観る者に大きな衝撃を与えた。当時その能力を水戸は高く評価しており、以降、常に補強候補に挙がっていたという。

 ただ、なかなかタイミングが合わず、獲得には至らなかった。だが、水戸は諦めなかった。今季中島は札幌から育成型期限付き移籍で藤枝に在籍していたものの、第24節までわずか6試合の出場にとどまっていた。活躍の場を得られていない中島に対して、オファーをかけたところ、藤枝と札幌と合意に達し、藤枝との契約を解消して、水戸に期限付きで移籍することが決まったのだった。追い続けた結果、ついに思いが実ることとなった。

「大事な1年」のJ2藤枝でも不完全燃焼…

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佐藤 拓也