
【特集】新時代の名将、シャビ・アロンソ革命#6
かつてレアル・ソシエダ、エイバル、リバプール、レアル・マドリー、バイエルン・ミュンヘン、そしてスペイン代表をピッチ中央から操った司令塔は、タッチライン際でも絶大な影響力を発揮している。いかに古豪レバークーゼンを立て直し、就任2年目にしてブンデスリーガとDFBポカールの2冠、そして欧州史上最長の51戦無敗を達成したのか。新時代の名将、シャビ・アロンソが巻き起こす革命を特集する。
最終回では「永遠の2番手」と揶揄されてきた負の歴史に終止符を打つ、勝者のメンタリティを古豪に植えつけたマネージメント術の正体に迫る。
「第一はマネージメント、その次に来るのが戦術だ」
シャビ・アロンソは戦術家として優れているだけでなく、モチベーターとしても突出した能力を持っている。
レバークーゼンが歴史を変えて、クラブ史上初のブンデスリーガ制覇を成し遂げる7カ月前――。2023年9月、『キッカー』誌は飛躍の要因をこう分析した。
「シャビ・アロンソが就任以来、繰り返し使ってきた言葉、それは『メンタリティ』だ。バスク人監督は2シーズン目の指揮に向けて『メンタリティを構築したい』と明かした。最高の成功を収めるには、絶対成功するんだという強い意志、ハングリーさ、レジリエンス(回復力)、自発性が必要だからだ。
(中略)
チームがここまでうまくいっているのは、戦術面の成長に加え、選手たちのモチベーションが高まっているからである」
同誌はスポーツ部門取締役シモン・ロルフェスの「チームのスピリットとキャラクターが大きく変わった」というコメントも引用し、「レバークーゼンは新たなマインドセットを手に入れ、負の歴史を終わらせようとしている」と結論づけた。
その予想は現実のものとなる。レバークーゼンはブンデスリーガ初の無敗優勝を成し遂げ、さらにDFBポカールのタイトルも手にした。残念ながらEL決勝でアタランタに敗れて3冠とはならなかったが、「Vizekusen」(Vizeはドイツ語で「準」。永遠に準優勝どまりという意味)という揶揄は過去のものになった。
#OTD in 2002, Real Madrid lifted the trophy for the 9th time…
Raúl González, Zinédine Zidane#UCL | #OnThisDay | @realmadriden pic.twitter.com/lwCn1avwPf
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) May 15, 2020
選手やスタッフ、レバークーゼンに関わるすべての人のマインドセットが変わったことが、歴史を変える最大の要因になったのである。言うまでもなく戦術は大事だが、「自分たちが優勝できるはずがない」という思い込みを覆さなければ、どんな革新的なアイディアも機能しようがない。
実はすでに就任時、シャビ・アロンソ自身、「戦術よりもマネージメントが鍵になる」と予言していた。2022年10月の就任会見のことだ。
「最も大事なのは、選手たちに信じさせることだ。監督は練習によって、選手たちに日々成長できると感じさせなければならない。監督の知識とリーダーシップが成長の助けになると感じさせなければならない。チームづくりで第一に来るのはマネージメントであり、その次に来るのが戦術だ」
@xabialonso: "Es geht jetzt darum die Spieler kennenzulernen, die Stimmung zu erspüren und mit der Mannschaft zu sprechen. Ich schaue nicht zu weit in die Zukunft. Ich schaue von Spiel zu Spiel, das nächste Ziel ist immer das wichtigste."
#B04S04 | #Bayer04 | #Bundesliga pic.twitter.com/rwPbvClpfe
— Bayer 04 Leverkusen (@bayer04fussball) October 6, 2022
友達であり手本でもありながら…ジャカが感じる「公平性」
では、シャビ・アロンソは「永遠に優勝できない」と思い込んでいたクラブにおいて、どんなマネージメントを実行したのか?……



Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。