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「90分間出られれば、点を取る自信はある」愛媛FCの18歳、舩橋京汰が抱く自信と焦り

2024.07.10

【特集】ポストユースの壁に挑むルーキーたち#2
舩橋京汰(愛媛FC)

高卒Jリーガーが試合経験を積む場がない――「ポストユース問題」が深刻化している。J1で出番を得ることは容易ではなく、J2、J3にレンタルしても必ずしもうまくいかない。近年、ルーキーイヤーからJ1で活躍しているのは松木玖生(FC東京)や荒木遼太郎(当時鹿島)が目立つくらいだ。有力選手の大学進学や欧州移籍が加速しているのも、この問題と無関係ではない。彼らはプロでどんな壁に直面し、それを乗り越えようとしているのか。ユース年代を卒業したプロ1年目のルーキーたちの挑戦に光を当ててみたい。

第2回は、天皇杯・岡山戦でハットトリックを記録するなど愛媛FCで躍動する舩橋京汰。自信と焦りを胸に前を向き続ける18歳のストライカーの「今」を伝えたい。

 プロデビューを果たしてまだ半年に満たない18歳の若者は、今季ここまで公式戦で4ゴールを奪取。客観的に見れば、高卒ルーキーとして上々のスタートと言って差し支えないモノだが、本人の肌感は異なっている。

 「自分が思い描いていた場所からはまだ遅れている」

 まだあどけなさが残り、いかにもルーキーらしいハツラツとした表情が邪魔をしてやや読み解くのは難しいが、舩橋京汰の目の奥には確かに“焦り”が潜んでいた。

Photo: EHIME FC

磐田ユースからやって来た“即戦力級の高卒ルーキー”

 今季、磐田U-18からJ2愛媛に加入した舩橋は開幕前から“即戦力級の高卒ルーキー”との呼び声が高かった。

 舩橋は磐田U-18ではユース年代の最高峰、高円宮杯プレミアリーグWESTで2年連続2桁得点を挙げてチームのエースとして君臨。昨季はトップチームにも2種登録され、ルヴァンカップ3試合に出場し、天皇杯ではJ1覇者となった神戸相手にゴールも奪った。

 次代の磐田の看板を背負うエース候補生にファン・サポーターは新シーズンでのトップチーム昇格を疑わなかったはずだが、昇格は叶わず。舩橋は活躍の場を外へ求めることになる。

 “金の卵”は、思わぬ形で愛媛へ転がってきた。

 「いろんなJクラブから声がかかって練習参加させてもらう中、愛媛が僕のフィーリングに合っていました。サッカーのスタイルもそうだし、先輩方も優しくて自分のやりやすいようにやらせてくれました。それも決め手の1つでした」

 昨夏、愛媛に練習参加し、トレーニングマッチでは2得点のインパクト。確かな手応えをつかみ、来るべきプロデビューに期待を膨らませた。

Photo: EHIME FC

理想の選手はフリアン・アルバレス

 「僕の理想とする選手はマンチェスターシティのフリアン・アルバレス。守備もがむしゃらに頑張りつつ、点も取れる。どうすればああいう感じに動けるんだろうって、いつも彼のプレーを見ています」

舩橋が目標とするフリアン・アルバレスの23-24シーズンのプレー集。長期離脱を強いられたケビン・デ・ブルイネ不在の穴も埋め、36試合11ゴール9アシストでマンチェスターCのプレミアリーグ4連覇に貢献した

 実際、舩橋のプレースタイル自体はアルゼンチン代表の若きエースに酷似している。相手DFに対して繰り返し駆け引きを挑み、一瞬のスキを突いて背後へ抜け出る。前を向いてボールを受ければ猪突猛進。ゴールへ力強く突き進み、躊躇なく足を振り抜く。守備面における献身性も強みとし、解き放たれた猟犬のようにピッチを全力で駆け回り、最前線から強度の高いチェイシングを繰り返すなど、攻守両面でのチームへの高い貢献が期待できる。

 そんな姿は今季チーム始動後、最初のトレーニングマッチから露わになっていた。……

Profile

松本 隆志

出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。