選手の次は、指導者の欧州移籍?JFAライセンス改革の目的の1つは「UEFAライセンスとの互換性」
【特集】「欧州」と「日本」は何が違う?知られざる監督ライセンスの背景 #12
日本の制度では20代でトップリーグの指揮を執ったナーゲルスマンのような監督は生まれない?――たびたび議論に上がる監督ライセンスについて、欧州と日本の仕組みの違いやそれぞれのカリキュラムの背後にある理念を紹介。トップレベルの指導者養成で大切なものを一緒に考えてみたい。
第12回は、ここまでのヨーロッパの事例を踏まえてJFAライセンス制度のかじ取りを担うJFA指導者養成ダイレクターの木村康彦氏、S級チューターを務める奥野僚右氏と相馬直樹氏の3人に話を聞いた。前編では「ヨーロッパで活躍する日本人指導者を輩出する」ために「UEFAライセンスとの互換性を目指す」というライセンス改革の野心的なビジョンについて、当事者たちの言葉を伝えたい。
日本サッカー協会によるコーチングライセンス制度が誕生したのはJリーグ誕生よりはるか以前のこと。1993年のプロリーグに創設に合わせて「S級ライセンス」が創設され、その後も様々な制度改革が行われてきた。
その実態については意外に知られていない上に、ライセンスを実際に取得した者も「当時の自分の経験」のみで世に語ってしまう傾向もあり、現状とのギャップが生まれているようにも感じていた。実際にライセンスを扱っている現場の状況はどう変わってきているのか。そしてどこに課題感を持ち、どう変えようとしているのか。日本サッカー協会の当事者3名に話を聞くことができた。
その1人が今年2月1日からJFA指導者養成ダイレクターに就任した木村康彦氏だ。「プロ監督に求められる指導者資格となるS級ライセンスだけでなく、キッズリーダーやD級ライセンス、またリフレッシュ講習会(すでにライセンスを保持している者に向けた講習)などすべてを統括している」立場にある。
その上で、木村氏はS級ライセンスや、U-18年代の指導スペシャリストを養成するために新たに創設されたエリートユースA級のチューター(平たく言うと、『指導者の指導者』)も務めている。
日本サッカー協会が従来のS級ライセンス講習から大きくブラッシュアップを図っている動機の一つとしては、「将来的にUEFAライセンスと互換性を持てるようにすること」(木村氏)にある。
「ヨーロッパで活躍する日本の指導者が出てきてほしい」
「まず初めに言っておきたいのは、日本が単独で解決する課題ではなく、もっと大きな枠組みで動いている話だということです」
そう切り出した木村氏は、そもそもの大前提である「JFAライセンスとAFCライセンスの互換性」について補足する。……
Profile
川端 暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。