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「アカデミー出身の大学生をしっかり見る」強化部・橋本早十スカウトが明かす、育成循環型とは何か?

2024.06.22

【特集】大宮アルディージャ、反撃開始 #4

大宮アルディージャは、昨シーズンクラブ史上初のJ3への降格を経験した。近年の大宮の実情を見ると、かつてJ1で上位にも進出した面影はもはやない。なるべくしてなったJ3降格という見方もできるだろう。

しかし、J3に降格したことで大宮がここまでやってきたことをすべて否定してしまうのはどうだろうか。大宮が進んで来た道を振り返ると、間違いはあったかもしれないが、大きな財産を築いてきたことも忘れてはいけない。その財産がなければ、鬼門と呼ばれるJ3初年度で、開幕から1位を独走することはなかっただろう。

大宮アルディージャ特集第4回では、近年大卒選手の活躍が目立っている理由、強化部が掲げている方針「育成循環型」とは何なのか?について、橋本早十スカウトに話を聞いた。

大卒選手の活躍を支える「育成循環型」という思想

――昨季が3人、今季が4人と近年は大卒選手の獲得が目立ちます。

 「自分がトップの強化になった時は、毎年のようにJ2で残留争いをしていたタイミングなので何かしらの変化が必要という思いがありました。継続してやっていかないといけないこともあるのですが、自分が特に感じていたのはこれまで投資してきた選手たちの獲得ですよね。最近はアカデミーにいた選手が大学に行って活躍していることが増えてきています。大学に行った時点で一度は手放していますけど、そういう選手が意外と大宮に戻ってきていなかったし、提携している東洋大学からもそこまで選手を獲っていなかった。これはずっと育成のスカウトをやってきた中で感じていることで、経営的な視点で言っても、最初から売るためのことを考えてはいないですけど、そういう選手たちの価値を高めていくことを考えなければいけないと思っていました。それが大卒選手が増えてきた理由ではあると思います」

――昨季で言えば高柳郁弥選手、今季で言えば村上陽介選手、関口凱心選手が当てはまります。

 「今の大宮はアカデミーが評価されてきていて、いい選手も多いです。原(博実)さんも『育成循環型』という言い方をしています。ユースからトップチームに昇格はできなかったけど、大学に行って活躍している選手はクラブとして戻すことが大事だと思いますし、僕自身もスカウトとして大事にしています。もちろん、アカデミー出身だからと無条件というわけではなく、そこはちゃんと評価しないといけないですけど、自分の中の優先順位としては、まずアカデミー出身選手をしっかりと観ると決めています。

 特に関東1部でしっかりと試合に出ている選手は『大学でのポジション争いに勝って試合に出る』と、1つの結果を残しているわけですから、そういう選手を中心に観に行って、その対戦相手で気になる選手がいれば一緒にチェックします。今はスカウトを1人でやっているので効率的にということを考えても、そういう考えでやっていますね」

――1人で多くの選手を追いかけるのは大変ですね。……

Profile

須賀 大輔

1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。『ELGOLAZO』では柏レイソルと横浜FCの担当記者を経て、現在はFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。その他の媒体でも、執筆・編集業を行っている。@readysuga1214