「まだ水戸で何も成し遂げていない」安藤瑞季が内に秘めた「水戸の背番号9」への並々ならぬ思い
日本人9番の潜在能力 #1
安藤瑞季(水戸ホーリーホック )
「9番」という背番号は、点取り屋=ストライカーという印象が強い。過去にフットボリスタでは「日本人ストライカー改造計画」と題した特集で世界に通用するストライカーとは何なのか?を考えてみたが、あれから4年が経ち、若手の海外移籍が加速する中で、今Jリーグの舞台で活躍する日本人9番の現状に注目してみた。現代サッカーを生き抜く多種多様な9番はどんなキャリアを過ごし、これからどこへ向かおうとしているのか――。
第1回は、水戸ホーリーホック加入4年目、昨季キャリアハイの9ゴールを記録した安藤瑞季。「まだ水戸で何も成し遂げていない」。24歳のFWが明かす「チームが勝つこと」への強い思いとは?
安藤瑞季には「水戸ホーリーホックの背番号9」に並々ならぬ思い入れがある。
長崎総科大附属高校時代から世代別日本代表に選出されるなど将来を嘱望されてきたストライカー。高校卒業後の2018年にC大阪に加入するも、出場機会に恵まれず。2020年にFC町田ゼルビア(当時J2)へ期限付きで移籍すると、33試合で7得点を挙げて、Jリーグの舞台で才能を証明して見せた。
そして、プロ4年目の2021年、安藤はC大阪に残ることなど様々な選択肢があった中で水戸への完全移籍を決断した。
先任の「9番」中山仁斗に憧れて…
その大きな理由を「中山仁斗選手と一緒にプレーしたかったから」だと言い切る。現在、仙台で背番号9をつけて活躍を見せる中山だが、2020年から2年間、水戸に在籍。パワフルなプレーで攻撃をけん引して、さらに獰猛にゴールに向かって得点を重ねた。2020年、中山を中心に水戸は「超攻撃的」なサッカーを繰り広げて、リーグ最多得点を記録。それまで「守備的」の色が強かった水戸のイメージを劇的に変えて見せたのだった。
そんな中山に憧れて、安藤は水戸にやってきた。
そして、2021年シーズン後に中山が仙台に移籍すると、背番号9を受け継いだ。「中山さんを超える成績を残して、水戸ホーリーホックの背番号9の価値を高める」ことを使命にピッチに立ち続けてきた。
安藤の魅力はなんといっても、日本人離れしたパワー。コンタクトプレーで負けることはほとんどなく、ボールを受けると重戦車のごとく、マーカーを寄せつけずにゴールに向かっていく。そのパワーが活きるのは攻撃だけではない。守備においても献身的で、強度の高い守備で相手に圧力をかける。攻守においてアグレッシブなサッカーを標榜する水戸の象徴的な存在と言える。
しかし、2022年シーズンは貢献度の高いプレーを見せはしたものの、32試合に出場してわずか3得点に終わってしまう。「ふがいない成績だった」と使命を果たせなかったことを悔やんだ。より強い覚悟を持って挑んだ2023年シーズン、安藤はキャリアハイとなる9得点を記録。特に強烈なインパクトを残したのは最終節清水戦でのゴールだろう。……