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見木友哉をヴェルディに紹介するなら「井出っぽい選手」。典型的10番だが、俊敏で闘える

2024.02.18

[特集]個人昇格選手の可能性
#2 見木友哉(ジェフユナイテッド市原千葉→東京ヴェルディ)

近年だとFC岐阜からヴィッセル神戸にステップアップした古橋亨梧、松本山雅や水戸ホーリーホックで「J2最速」と言われた前田大然など、J2からの個人昇格でJ1、海外移籍、そして日本代表にまで登り詰めた例が増えてきている。ポテンシャルのあるサッカー選手は出場機会を得れば「化ける」。2024シーズンに臨む個人昇格組の可能性を古巣の番記者に解説してもらおう。

第2回は、ジェフ千葉の10番で、新天地の東京ヴェルディでも同じ番号を背負う見木友哉だ。

埋もれなかった10番

 千葉の10番は東京ヴェルディでも10番をつけるらしい。おそらく最適なポジションは左のインサイドハーフなので、確かにこの背番号通りではある。ただ、特定のポジションに収まらないところが見木友哉の魅力だろう。

 千葉と東京Vでプレーした選手はけっこういるのだが、千葉から東京Vへ移ったMFとしては井出遥也(ヴィッセル神戸)が最も近いと思う。井出は千葉からガンバ大阪、モンテディオ山形を経由しての東京V加入だが、プレースタイルは見木とよく似ていた。東京Vのサポーターにとっては「井出っぽい選手」という説明がとりあえずわかりやすいかもしれない。

 小柄で俊敏、キレのあるテクニックを持ち、パスセンスに優れ、鋭いシュートも持っていて得点力がある。こう書くと攻撃的MFの選手の説明として、いかにもありきたりになってしまうが、つまりは日本の典型的な10番タイプということなのだろう。実際、こういう選手は山ほどいる。そんな中、見木が競争に打ち勝って活躍し、今年「個人昇格」を果たすに至ったのにはやはりそれなりの理由がある。

 上手いだけの選手ではなかった。おそらくこれが最も大きな理由だろう。

キャンセルが利く俯瞰の視点

 技術的な特徴の1つは「キャンセル」が利くこと。

 ドリブルで進みながら、あるいはキックのモーションから、キュッと抱え込むような切り返しで方向を変える。最初から対面の相手をかわすつもりで切り返している時もあるが、プレーの判断を途中で変えているケースも多々ある。これはMFとして優れた資質だ。

 小柄な体をめいっぱい大きく使って、はじけるような躍動感のあるアクションは全力プレーそのものに見えるが、見木は決めたプレーに全フリはしていない。そうでなければ、キャンセルした直後にも体勢を崩さず、遅滞なく次のプレーに移行するということはまずできない。……

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。