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示された相手のロングボールへの回答と、試合の中で見せたビルドアップ局面の整備。アジア杯バーレーン対日本戦分析

2024.02.02

森保JAPAN戦術レポート――アジアカップ編#4_ラウンド16バーレーン戦

森保一監督が続投しリスタートを切った2023年、欧州遠征での強豪撃破をはじめ結果を残し、着実に歩みを進めてきた日本代表。そんな第2期チーム森保にとって、今回のアジアカップはチーム強化の進捗を測る格好の舞台となる。『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者でありチーム森保の戦いを追い続けているらいかーると氏が、試合ごとに見えた成果と課題を分析する。

バーレーンが相手となったラウンド16は3-1で勝利。ここまでの3試合での経験を踏まえたロングボール対策や試合の中で調整を加えていった配置バランスなど、今後の戦いでもポイントとなりそうな日本の戦いぶりを中心に試合の内容を精査する。

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 無事にGS突破を果たした日本。首位通過が不可能となり、次の相手は韓国だと誰もが想像していたが、すったもんだがあり相手はバーレーンとなった。さらに中6日と間隔が空いたことで、試合の疲労は限りなくリセットされそうなくらいの状況だ。森保監督にとって、このような贅沢な時間は過去にあっただろうかと考えたくなる日程となった。

 インドネシア戦で“いつか帰る場所”を思い出したチーム森保。連動した強度の高いプレッシング、高いDFラインを基軸としたコンパクトな布陣、個々が労を惜しまないことによって可能となるネガティブトランジションを披露したメンバーがほぼそのまま、ノックアウトラウンド初戦でもスタメンに名を連ねることとなった。ターンオーバーというより、大会を通じてシンプルにスタメン争いという名の競争をしてきたようにすら感じる采配となっている。

マンマークに遭う久保

 恒例になっている左サイド突撃で試合を始めたかった日本だが、笛が鳴る前に日本陣地に侵入してきた相手に驚いて久保がボールを触ってしまい、スクランブルアタックとなった。おそらくはシンプルなミスだろう。笛が鳴る前に相手ピッチに入ることは反則なのだが、絵に描いた餅になりつつあるのが現状である。ただ、日本での試合なら厳しく注意されるだろう。

 堂安律がいきなりイエローをもらいそうになるが事なきを得たのち、バーレーンのボール保持の配置が[4-1-4-1]であることが判明する。日本は[4-4-2]で対抗する意思を見せ、旗手怜央と遠藤航が並ぶ形となった。そして日本のボール保持もまた[4-1-4-1]で、バーレーンのプレッシング配置はボール保持時と変わらず[4-1-4-1]という立ち上がりになった。バーレーンがもう少しスクランブルを狙ってくるかと考えていたが、慎重に勝ちに来ている様子だ。

 バーレーンの守備の論理を見ていると、アンカーの6番モハメド・アルハルダンは久保建英をマンマークする様相であった。代わりに旗手がフリーになる構造なのが、バーレーンの旗手周りの選手たちが背中で彼を消すことに注力していたこともあって、ビルドアップ隊の起点となる選手たちが相手を引きつけるか、もしくは固定する必要がありそうだった。

 とはいえ、相手のDFラインと中盤ラインの間に“生息”する旗手や久保にボールを届ける手段は中央を起点とするだけではない。サイドからの侵入も定跡である。初手で大外レーンにいる中村敬斗からライン間にいる旗手にボールを届けた場面は見事だった。中央が消されているならば、サイドが空いているのはサッカーの理である。

 時間の経過とともに、バーレーンの守備の論理がさらに見えてくる。4バックで構えているけれど、SBに日本のウイングへの対応をできるだけさせないようにしていた。バーレーンのウイングの選手ができる限り日本のウイングにチャレンジする形を優先しており、日本のSBが相手を引き出そうとしても、誰も来ない展開となる。

日本のロングボール対策

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Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。