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3戦目にして復活した日本の長所。その要因とは? アジアカップ日本対インドネシア戦分析

2024.01.26

森保JAPAN戦術レポート――アジアカップ編#3_GS第3節インドネシア戦

森保一監督が続投しリスタートを切った2023年、欧州遠征での強豪撃破をはじめ結果を残し、着実に歩みを進めてきた日本代表。そんな第2期チーム森保にとって、今回のアジアカップはチーム強化の進捗を測る格好の舞台となる。『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者でありチーム森保の戦いを追い続けているらいかーると氏が、試合ごとに見えた成果と課題を分析する。

GS最終節となったインドネシア戦は、終盤に1点を返されたものの3-1で勝利しグループ2位通過を決めた。これまでの2試合と顔ぶれが大きく変わったことで、日本の戦い方にどんな変化が見られたのか。また、過去2試合では相手のプランニングに苦しんだが、この試合のインドネシアも例に漏れず対策を講じてきた。そのアプローチがどんなもので、それを日本がどう打ち破ったのかを詳らかにする。

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 今大会は3位でもGS突破の可能性が残るレギュレーションとなっており、負けられない戦いであることは間違いないけれど、負けても即敗退ではないという意味で選手の入れ替えが行いやすかったのかもしれない。ベトナム戦からイラク戦に関しては最小限の変更にとどめた森保一監督だったが、このインドネシア戦では大幅な入れ替えを敢行した。そんな中ですべての試合に出場している鈴木彩艶、遠藤航への信頼を感じた。前者は投資的な意味合いもあるだろうが、リバプールへの移籍を経ていちだんとレベルアップした感のある遠藤の大黒柱感は異常なほどだ。

[4-2-3-1]とのハイブリッドではなく明確な[4-3-3]を選択

 日本のキックオフで恒例となっている、左サイドにロングボールを蹴っ飛ばす形で試合が始まった。キックオフの笛が鳴る前に、中山雄太がさりげなく相手陣地に入っていたのは面白かった。なお、このキックオフに明確な成功の形というものは特にない。マイボールになれば良しであることは言うまでもないが、相手ボールになってもトランジションで奪い切ればいい。そんな二段重ねになっている。

 日本のボール保持の配置は[4-3-3]。旗手怜央、久保建英をインサイドハーフとする形であった。開始20秒ですでにその配置となっていたので、最初から決まっていたと考えて良いだろう。初手の段階でボールを受けに下がる久保に呼応して彼の空けたエリアに毎熊晟矢が移動し、旗手が外に流れればウイングの中村敬斗が内に入ってくる関係性からは、ポジションチェンジとバランスの維持に細心の注意を払っていることが伺えた。

 インドネシアのプレッシングの配置は[5-4-1]。ずるずる下がる傾向にあるが、それでもあっさりとペナルティエリアまで下がることはしたくない様子であった。特徴として、中央の3バックは久保、旗手の迎撃よりもサイドと中央のカバーリングを優先しているようだった。それによってインドネシアは中盤の選手が久保と旗手を守備の基準点にするようになり、日本のビルドアップ隊が楽にボールを持てそうな構図となっていった。

 開始早々に試合が動く。簡単にボールを受けた毎熊と堂安はコンビネーションで堂安のカットインを導き、堂安のスルーパスに抜け出した上田が倒されてPKを得る。このPKを上田が剛速球で決めて日本があっさりと先制することとなった。

連動したプレッシング+高強度のネガティブトランジション

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Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。