FC琉球が感じた「以前とは違うJ3」目の色を変えた敵が向かってくる【特集:J3に落ちたときに大事なこと】
J3に落ちたときに大事なこと#3 FC琉球の場合
近年の競争激化で、J2からJ3に降格したクラブは簡単には上がれなくなった。今J3で何が起きているのか、降格した後チームは何をどう準備すべきか。降格経験のあるクラブの番記者が降格当時の事情、そしてその時に何が大事だったかを振り返る。
第3回はFC琉球。1シーズンでのJ2復帰を目指した彼らの前に、5年の間に様変わりしたJ3の舞台が牙を剥いた。当時を知る仲本兼進が以前との環境の変化と、チーム自体が直面した課題の両面から低迷した2023シーズンを考察する。
1年での返り咲きを至上命令として戦ったチームは、濁流にもがいたJ2での経験をプラスに転嫁させることができなかった。何より結果を求められ、選手たちに重圧がかかっていたことは事実。「昇格ではなく優勝を目指す」と、昇格圏の2位以内に入るよりも先の目標設定で発破をかけて船出を迎えたが、一度ついた負け癖はそう簡単に振り払うことはできず。何より、J2とは別世界だったJ3の海原に難破寸前まで追い込まれ、今季終わってみれば17位で船旅を終える結果となった。
J3降格に伴い池田廉(現・大分)など主力選手の移籍は辞さなかったが、野田隆之介や阿部拓馬、清武功暉、福村貴幸ら経験豊かな選手の放出を阻止。双璧をなすダニー・カルバハルと田口潤人のGK陣も盤石で、徳島から森田凜(現・奈良)と藤原志龍、湘南の平松昇といった期待の新星が期限付移籍で加入するなど、J2時代と大差ない強化費を注ぎ込んだクラブの再昇格に懸ける思いに加減はなく、開幕日に近づけば近づくほど期待一色に染まっていった。
しかしながら、前任者であるスペイン人指揮官のナチョ・フェルナンデス監督が「引き分け狙いも辞さない負けにくいサッカー」を敷くためロングボールに注力したリトリートの名残は少なからず漂っていて、テクニカルな勝負を好むJリーグ監督1年生の倉貫一毅監督は無意識に下がってしまうDFラインの修正も取りかからなければならず、なおかつ内容よりも結果を追求する周りからのプレッシャーもJ2から降格したばかりのチームにあり得るストレスであり、ゆえに萎縮しダイナミックさが隠れる傾向にあった。その切迫した思いを抱え込んだ状況こそが下への引力を発生させるいわゆる「沼」の正体なのかもしれない。
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Profile
仲本 兼進
78年生、那覇市出身。地元ラジオ局で制作業に携わり、サッカー番組を担当した04年からFC琉球に密着。12年にフリーとなり『エルゴラッソ』・『サッカーダイジェスト』の琉球担当記者、『琉球サッカープレス(タグマ!)』の編集長として昇降格の哀歓を共有する。また沖縄SVや育成年代など幅広く沖縄サッカー界をカバーし各種媒体に寄稿。執筆のほかTV・ラジオ・WEB番組に出演。『KICK OFF!OKINAWA(RBCテレビ)』のディレクターとして時にカメラを構えることもある何でも屋。