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SC相模原、降格からの経営陣交代の是々非々【特集:J3に落ちたときに大事なこと】

2023.12.28

J3に落ちたときに大事なこと#2 SC相模原の場合

近年の競争激化で、J2からJ3に降格したクラブは簡単には上がれなくなった。今J3で何が起きているのか、降格した後チームは何をどう準備すべきか。降格経験のあるクラブの番記者が降格当時の事情、そしてその時に何が大事だったかを振り返る。

第2回に登場するのはSC相模原。1年でのカムバックどころかまさかの最下位に沈んだ2022シーズンを経て、ピッチ内外で体制を一新し再スタートを切ったクラブの道程を、舞野隼大が追う。

夏に9人を補強もJ2残留は叶わず……

 前年にJ2ライセンスを取得し、最終節に逆転で昇格をつかみ取った相模原。クラブ史上初となるJ2での挑戦は、コロナ禍による「4チーム自動降格」という特殊かつ理不尽なレギュレーションによって、より困難なものになった。

 2021シーズンの開幕当初に指揮を執っていたのは、チームを昇格に導いた三浦文丈監督。J3を戦っていた時に植えつけてきた、粘り強く最後まで諦めない姿勢、素早い攻守の切り替えとカウンター、ロングスローを含めたセットプレーで戦い、「勝ち点50」を目標に掲げてリーグ定着を目指した。

 しかし、第16節モンテディオ山形戦でシーズン9敗目を喫するとクラブは三浦監督を解任。フォーメーションを[3-2-4-1]から[4-4-2]にシフトし、夏にそのための補強も行おうとしていたタイミングでのことだったが、クラブは大きな決断を下した。

 新監督に就任したのは、V・ファーレン長崎や大宮アルディージャなどを率いた高木琢也氏。夏には2021年に運営会社の株式19%を取得し、経営参画した株式会社ディー・エヌ・エーの資金も用いて、若手の木村誠二や成岡輝瑠、藤原優大、児玉駿斗らを期限付きで獲得。ベテランの選手も含め、合計9人を新たに加える積極補強を行なった。長期的な戦略ではないことは重々承知の上、J2に残るための判断だった。

 スタメンの半数以上は新加入選手。シーズン序盤戦とはほぼ別チームとなり、巻き返しを図った相模原は最下位から19位にまで浮上。最終節の東京ヴェルディ戦で勝てば自力残留できる位置にまで上り詰めた。だが結果は0-3で完敗。1年での降格が決定した。

 1年でのJ2復帰を目指すことになった相模原は、高木監督が続投を決意。「J2に残留できるチャンスがかなりありましたが、降格してしまったことは自分の責任です。ただ、『ここからステップアップしていくなかで、自分たちの土台をしっかり作れるな』ということも含め、J3で、この相模原でもう一度やりたいという気持ちになった」と覚悟を示していた。

1年でのJ2復帰を目指すはずがJ3最下位に

 だが復帰までの道のりは、かなり過酷なものだった。……

Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。