無失点3連勝の優勝候補フランス。伊東や南野の後輩も奮闘する「育成大国」の逸材たち
U-17W杯から占う日本の未来 #13
コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げた。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第13回は今大会の「本命」の一つとして、順当にグループEを3連勝・7得点0失点で首位通過したU-17フランス代表について、同国在住の小川由紀子さんがレポートする。
現在、インドネシアで開催中のU-17W杯で優勝候補の一角に挙がっているのが、フランス代表だ。
アメリカ、ブルキナファソ、韓国との組み合わせとなったグループステージでは、初戦でブルキナファソを3-0、2戦目で韓国を1-0で下し、同じく両国に勝利したアメリカとの直接対決を待たずにそろって決勝トーナメント進出を決めた。その最終節も3-0で圧勝し、11月22日のラウンド16では日本と同居したグループDを2位で通過したセネガルと対戦する。
フランスは、今年5〜6月にハンガリーで開催されたU-17欧州選手権に準優勝し、上位5カ国に与えられるU-17W杯参戦権を手に入れた。この大会では準々決勝でイングランド(1-0)、準決勝でスペイン(3-1)を破ってファイナルに到達。ドイツと戦った優勝決定戦は、0-0でフルタイムを終えた後、PK戦の末の惜敗だった。
国内2部クラブから多数参戦の背景
今大会に出場しているフランス代表は、この欧州選手権とほぼ同じメンバーだ。まだ育成過程にあるこの年代の選手は、必ずしもプロクラブのパワーバランスを反映しているわけではないのが興味深い。21人中最多の3人を輩出しているのは、現在リーグ2(フランス2部)を主戦場としているバランシエンヌだ。そのうちCBのジョアシャン・カイ・サンダ(背番号5)はチームキャプテンを務める。
バランシエンヌは今年の夏、サウサンプトンの筆頭株主でもある「スポーツ・リパブリック」によって買収された。デンマーク人が率いるこの投資会社は若手育成プログラムに力を注いでいるから、彼ら3人の躍進はその象徴とも言える。
また、伊東純也と中村敬斗が在籍するリーグ1のスタッド・ランスからも、DFが2人(ノア・サンギ、アルチュール・チャプチェ)メンバー入りしている。……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。