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次の経験へ感情を抑える「大人のサッカー」。セネガル戦快勝を生んだ森山ジャパンの我慢比べ

2023.11.18

U-17W杯から占う日本の未来 #12

コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げた。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第12回では3大会連続での決勝トーナメント進出を決めたグループステージ最終節セネガル戦で2-0の快勝を生んだ我慢比べに現地取材する川端暁彦氏が迫る。

 U-17日本代表を率いる森山佳郎監督は、今年のAFC U17アジアカップを前にして、こんなことを語っていた。

 「日本の17歳にとって、ここで勝つことによって経験できるモノと負けることで経験できなくなるモノがあまりに大きすぎる」

 世界大会に出ることで得られる、その「経験」とは何か。それを一言で表してしまえば、「未知との遭遇」ということになるだろうか。「彼らが普段、日本国内で行われる日常のサッカーでは決して味わうことのない驚きがここにはある」(森山監督)ということだ。

AFC U17アジアカップ優勝セレモニーでのU-17日本代表。森山監督自らトロフィーを使ったボケでチームを盛り上げる一部始終が収められている

 今回のU-17W杯は初戦でポーランド、第2戦でアルゼンチン、そして第3戦でセネガルと当たる形となった。「三者三様」と指揮官が形容したように、サッカースタイルも選手の特長も、そして文化や気質まで異なる3チームとの対戦。同質的な相手との対戦が続く国内の大会はもちろん、アジアの大会でも味わうことのできない種類の3連戦。ただ、「これぞW杯」(森山監督)を体感できる流れでもあった。

 もちろん組み合わせとしては、もっと弱い国のいるグループに入れば楽だったのは間違いない。ただ、指揮官は「ここで強い国と真剣勝負を戦うことは絶対に選手たちの財産になるから」と前向きに捉えてきた。セネガルとのグループステージ最終戦は、引き分け以上で突破の決まる、「中途半端になりかねない」難しいシチュエーションだったが、それもまた、ここでしか味わえない最高の経験とも言えた。

「0-0を引っ張りたい」見立てに応えたデュエルの成果

 「ここでこのチームが終わりになるのは絶対に嫌だった」

 そう語ったのはDF柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18)だが、全員が共有していた感情だろう。アルゼンチンに1-3と苦杯を舐めた直後から、選手たちは口々に「次」への思いを語り、モチベーションが落ちた様子はまったくなかった。

セネガル戦で先制点を演出した柴田

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Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。