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アルゼンチンとの真剣勝負でつかんだ「手応え」。決勝T進出に繋げたい後半の「戦う姿勢」を振り返る

2023.11.15

U-17W杯から占う日本の未来 #11

コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げた。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第11回は開始8分でつけられた2点差が響いて敗れたものの、後半に「戦う姿勢」を示して追い上げたアルゼンチン戦(●1-3)の「手応え」を、現地で取材する川端暁彦氏が振り返る。

現世界王者が教材の「日本では味わえない」圧力を前に決壊

 負けるべくして負けた試合——とは思えなかった。「むしろポジティブですよ」とは森山佳郎監督の言葉だが、実際に後半の内容に関しては日本がアルゼンチンを上回っていたのも確かだった。結果にフォーカスするなら、試合の序盤に2失点したことがすべてだったとは言えるが、「それだけではない」試合だった。

 U-17W杯のグループステージ第2戦。日本とアルゼンチンの状況は好対照だった。初戦でポーランドを1-0と破った日本は勝ち点3を持ってこの試合に臨んだ。対してアルゼンチンはセネガルに1-2と敗れ、いきなり苦杯をなめるスタートに。勝ち点0のアルゼンチンにとって、日本戦の重要度は説明するまでもない。そういうシチュエーションだった。

 ただ、今のアルゼンチンには最高の「教材」がある。ディエゴ・プラセンテ監督は取材エリアで開口一番に「カタールW杯も初戦で敗れてからのスタートだった」と語り出したのは何とも象徴的だった。偉大な世界王者がたどったのと同じ道程と思えば、敗戦スタートでも、そのストーリーラインにネガティブなイメージはない。後がないからこそ攻めるのみ。試合前から気合い十分のアルゼンチンイレブンは凄まじい迫力と圧力を持って、日本の選手たちに襲いかかってきた。

 立ち上がりからこの猛烈な圧力を受ける流れは森山監督も、そして選手たちも「わかっていた」と口をそろえる。ただ、ポーランドとの初戦に続いてわかっていても受け流しきれないのは、「彼らの日本での日常では決して味わえないものだから」(森山監督)。激しいプレス、別格のコンタクトプレー、攻守の切り替え速度、そして何より奪ったボールをゴールへ鋭く運んでいく技術的な精度が伴う攻めは、序盤から日本守備陣を決壊させるに十分だった。

 「試合の最初からあれだけの圧力をかけてきて、ああいう仕掛けでゴールを狙い続けてくるチームは日本にいない。選手たちはむしろよくやっていると思います。ただ、どうしても対応できるようになるまで時間がかかってしまう。たぶん選手たちは序盤、ちょっとビックリしていたとは思います」……

Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。