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プラセンテ監督に直撃!次節の相手アルゼンチンは「遊ぶようにプレーを楽しむ」独創性で勝負

2023.11.13

U-17W杯から占う日本の未来 #10

コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げた。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第10回はグループD第2節(11月14日)の対戦相手、U-17アルゼンチン代表について。今大会開幕前、インドネシアで最終調整に入っていたにもかかわらず、遠距離取材に応じてくれたディエゴ・プラセンテ監督の言葉を中心に、アルゼンチン在住のChizuru de Garciaさんがレポートする。

A代表のW杯優勝は“プレッシャー”ではなく“インセンティブ”」

 U-17アルゼンチン代表のディエゴ・プラセンテ監督がオフィスに入ってくる。ホワイトボードを背に、腰をかけるなり「いや、これはこっち側に置いてあった」と言いながら、デスクの上に置いてあったマテ茶用のポットと茶器の位置を変える。そして「さあこれですべて整ったよ、準備OKだ」とつぶやくや21人の選手の名前を読み上げ、「彼らはチームに招集されてこのユニフォームを着ることに誇りを感じている。ファンの君たちにも同じ気持ちであってほしい」と締め括る。すると、廊下を通りかかったエスカローニが入って来て「これどこかで見たような気がするんだけど?」と指摘し、2人が笑いながらハグを交わす――。

 以上は、今回のU-17W杯インドネシア大会に出場するメンバー発表のためにアルゼンチンサッカー協会が作成した動画の内容だ。昨年のW杯カタール大会優勝にあやかり、A代表のリオネル・エスカローニ監督が招集選手を発表した動画とまったく同じセッティングになっている。プラセンテが縁起を担いでマテ茶セットの位置から締めくくりの台詞まで真似た上に、エスカローニが登場して突っ込みを入れるというコミカルな演出はなかなか評判が良く、アルゼンチン国内の様々なメディアで取り上げられて話題を呼んだ。

 私もこのA代表の動画を真似るアイディアを面白いと感じた1人だったが、同時に、ちょっと不安を覚えてしまった。母国のユニフォームを着て人生初の世界大会に挑む10代の選手たちにとって、A代表の偉業を常に意識させることはプレッシャーに繋がるのではないかと憂慮してしまったのだ。

 だが、プラセンテの回答を前に、私の余計な心配はあっさり打ち消されることとなる。

 「いや、実際はまったく逆だよ。彼らにとってW杯優勝は“プレッシャー”ではなく“インセンティブ”なんだ。アルゼンチンは近年、あと一歩というところでタイトルを逃す悔しさを何度も味わってきた。でも今のA代表の選手たちはその状況を逆転させたんだ。やればできるというメッセージを伝えてくれたし、苦難の時期を乗り越えたことが一層の励みになる。この偉業は上(A代表)から下(ユース代表)のすべてのカテゴリーに浸透していく、とてもポジティブな要素なのさ」

 偶然にも、プラセンテ監督率いるU-17アルゼンチン代表がインドネシアでの最初の試合に挑んだ11月11日は、エスカローニ監督の動画が公開されてからちょうど1年後にあたった。

「静かなるリーダー」の真摯な指導に若者たちが共感

 育成に定評のあるアルヘンティノス・ジュニオルスの下部組織で育ち、同クラブで指導を受けたホセ・ペケルマンによってその後U-20アルゼンチン代表メンバーに選ばれ、1997年にマレーシアで開催されたU-20W杯で優勝を遂げた経歴を持つプラセンテ。師として仰ぐペケルマンの教えを軸に、代表における豊富な経験を育成の現場に注ぎ込む彼の言葉は、低いトーンの落ち着いた語り口調も相まって説得力に富む。……

Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。