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選手と国の未来に繋がるU-17W杯。高卒即海外の流れで上昇する「登竜門」&「見本市」としての価値

2023.11.09

U-17W杯から占う日本の未来 #4

コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げる。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第4回では前身のU-17世界選手権時代から数えて19大会目を迎えるU-17W杯の価値を、育成年代に明るい川端暁彦氏が高卒即海外がトレンド化しつつある日本サッカーの視点から解説する。

「輸出大国」もオール国内組。規制の強化による様相の変化

 17歳以下の世界一決定戦であるU-17W杯が11月10日よりインドネシアにて開幕する。

 1985年に創始されたこの大会は、以来2年に1度のペースで開催されてきた。2007年からは「W杯」の名を冠するようになったが(中身は一緒である)、インドネシアで開催される今大会が現行方式では最後の大会となる。2年後からは毎年開催の大会としてリニューアルされることが決まっているからだ。

 今大会に参加できるのは2006年1月1日以降に生まれた選手たち。つまり2023年に「17歳」になる選手までに出場権がある。この年代では「1歳」の差がどうしても大きくなるので、1つ下の年次からメンバー入りするのはかなり難しい。歴代のU-17日本代表を見ても、主力として食い込めた選手はMF久保建英など少数名だけだ。毎年開催になれば、こうした生まれ年の差によって積める国際経験が変わってきてしまう現状は変化しそうで、ポジティブな面も大きい。

 また、FIFAが「国際移籍は特例を除いて18歳から」と定めていることと合わせて考えれば(抜け穴はあるとはいえ)、その前年に当たる年齢で臨むこの大会は「登竜門」としての意味づけも大きい。将来欧州へ進出したいと考える若いサッカー選手にとって、この場に臨む価値の大きさは言うまでもない。実際、今年6月のアジア予選を戦っている時も、選手からは「自分の夢に繋がる大会」というニュアンスの言葉をしばしば聞く機会があった。

 FIFAの国際移籍に関する規制が強まったことで大会の様相は明確に変化していて、大会に臨む各国代表はいわゆる「国内組」がほとんどというオーダーになっている。かつてはローティーン(十代前半)から選手を狩られることの多かったブラジルやアルゼンチンといった「輸出大国」もオール国内組という編成。日本と対戦するセネガルもやはりオール国内組である(欧州圏のポーランドはドイツやイタリアなどに複数の「海外組」がいる)。

 ただ、現所属は「国内組」であっても、すでに「海外内定組」という選手もいたりする。例えば、日本と対戦するセネガルのエースであり、15歳でA代表デビュー済みのFWアマラ・ディウフもフランス1部のFCメスへの加入が決まったなどと報じられている。もっとも、このクラスの選手となると、「U-17W杯でオファーをつかむ」というより、「より良い条件、あるいはより良いクラブからの誘いを引き出す」ための場ということになるのかもしれないが。

セネガルが初優勝を果たしたCAF U-17アフリカ・ネーションズカップでも、当時14歳にして注目選手に挙げられていたディウフ。その期待に応える5ゴールの活躍で大会得点王に輝いている

「高卒即海外」をめぐる海外クラブとJクラブの綱引き

 また他ならぬ日本にも「海外内定済み」の選手がいる。神村学園高校のMF吉永夢希は、来年から日本代表MF伊東純也が足跡を刻んだ記憶も新しいベルギー1部のKRCヘンクへ加入することがすでに発表済みだ。……

Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。