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アジアの得点王とMVPはあくまで通過点。名和田我空は世界でのタイトル獲得を真剣に狙う

2023.11.07

U-17W杯から占う日本の未来 #2

コロナ禍を経て2019年以来の開催となるU-17W杯が、11月10日にインドネシアでいよいよ幕を上げる。前回王者ブラジルをはじめとする24カ国が17歳以下の世界一を争うFIFA主催国際大会の最年少カテゴリーは、アンドレス・イニエスタからフィル・フォデンまでのちのワールドクラスが頭角を現してきた若手見本市。AFC U17アジアカップ優勝チームとして森山佳郎監督が招集した全員国内組の“06ジャパン”にとっては、18歳から解禁される国際移籍も見据えてその才能をビッグクラブにまで知らしめる格好の舞台でもある。逸材集団の登竜門への挑戦を見届けながら、彼らが背負う日本の未来を占っていこう。第2回はU-17日本代表の注目選手として名和田我空(神村学園)にフォーカスする。

「我空は全て見えている」(神村学園高・有村圭一郎監督)

 中学生の頃から、「神村学園に凄い選手がいる」と名前を耳にしていたが、実際にプレーを目の当たりにすると名和田我空の良さがよく分かる。初めて見たのは2022年の3月。コロナ禍で中止となった九州新人大会の代替大会だ。高校入学前ながらも、10番を授かったアタッカーは九州の強豪相手に3試合連続ゴール。決勝では貴重な同点ゴールをマークし、チームにタイトルをもたらした。

高校入学前の九州新人大会の代替大会でプレーする名和田我空(Photo: Masayoshi Morita)

 代替大会で指揮を執っていた栢野裕一コーチの評が、名和田の特徴を捉えるには分かりやすいかもしれない。「プレーにストレスがない。次の事も考えているし、判断の選択も正しい。『そこに行くよね』というプレーができる。見えているし、イメージも付いているので、見ていて楽しい」。

 ドリブルすべき場面ではドリブルができるし、パスを選択した方が良い場面では味方を使える。隙があれば、常にゴールも狙っているため、相手にとってこれほど嫌な選手はいないだろう。指導者からすれば前のポジションならどこでもこなせるのも有難い。

 U-17ワールドカップでも活躍が期待される名和田は宮崎県都城出身。小学生の頃にテレビで見たMF髙橋大悟(FC町田ゼルビア)のプレーを見て、「自分もあんなプレーがしたいと思った」と神村学園中等部の門を叩いた。小学生の頃は技術と速さを生かしながら、ガムシャラにゴールへと向かっていくタイプだったが、中学生になると周りの身体が大きくなり始める。名和田は168cmと小柄なため、今まで通りでは上手く行かない場面が増えると、プレースタイルに変化を加えていく。「まずは周りを視て、慌てないで落ち着いてプレーしようと考えるようになりました」。

清水エスパルスとギラヴァンツ北九州でプレーし、今シーズンから町田ゼルビアの10番を背負ってJ1昇格に貢献した髙橋大悟。写真はJ2・40節ツエーゲン金沢戦で(Photo: Takahiro Fujii)

 名和田の売りである“視る”行為は、神村学園における良い選手の基準だという。理由について有村圭一郎監督はこう話す。「間接視野でボールと味方を視て、直視で相手を見ていれば動きが分かる。相手をずっと見ながらサッカーができるようになった選手はプレーの成功率が上がる。我空は全て見えている。他を視ているように見えても、直視でなくても相手をしっかり見ている」。多くの選手が間接視野で相手を視がちで、動いた相手に気付かずミスが起きる。だが、名和田は常に相手を視ているから自分が何をすれば良いか分かり、正しい判断ができるのだ。……

Profile

森田 将義

1985年、京都府生まれ。19歳から関西のテレビ局でリサーチ、放送作家として活動。サッカー好きが高じて、2011年からサッカーライターとしての活動を始める。現在は高校、大学など育成年代を中心に取材を行い、各種媒体に寄稿。