日本サッカー界の構造上で不可欠。なぜ、「レンタル選手」が重要なのか?
レンタル選手の現在地2023 #9
バル・フットボリスタでも取り上げた「ポストユース問題」。J1でプロ契約した高卒選手がその後どのように試合経験を重ねていくかは、日本サッカーの発展を考える上で大きな課題だ。J2やJ3への期限付き移籍はそれを解決する1つの手段だが、修行先でも厳しい戦いが待っている。試練を乗り越えて活躍する若手選手たちの「現在地」を徹底レポート。第9回は、今特集の総括として日本サッカー界の構造の中での「レンタル選手」の位置づけの変化や年々高まっている重要性を、あらためて川端暁彦氏に解説してもらった。
「レンタル=“あぶれている”選手」だった90年代
日本では「レンタル移籍」の通称が定着している「期限付き移籍」が制度としてJリーグに導入されたのは1994年のことだった。つまり、開幕2年目だった。契約が切れても自由な移籍ができず、しかも現在のようなA契約選手の保有数制限もなかった時代なので、“あぶれている”選手が今より多かった時代である。この制度の誕生は、ある種の選手にとって救いの道となった。
当時も若手のトップレベルへの出場機会は議論の的ではあったのだが、二つの点でシリアスな議論には至らなかった。理由の一つは、プロ野球の2軍戦をイメージして導入されたサテライトリーグが熱をもって盛んに行われていたことがあるだろう。当初はユースの選手や練習生などが出ることもできず(つまりそのくらい各チームは選手を余剰に保有していた)、公式戦に近いムード感の試合があり、プロの若手の「試合勘」「ゲーム体力」が疑問視されることは少なかったように思う。……
Profile
川端 暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。