ヒーローは遅れてやって来る。復帰後即特大のインパクトを残した宮城天は山形の逆転昇格PO進出のラストピース
レンタル選手の現在地2023 #7
宮城天(川崎フロンターレ→モンテディオ山形)
バル・フットボリスタでも取り上げた「ポストユース問題」。J1でプロ契約した高卒選手がその後どのように試合経験を重ねていくかは、日本サッカーの発展を考える上で大きな課題だ。J2やJ3への期限付き移籍はそれを解決する1つの手段だが、修行先でも厳しい戦いが待っている。試練を乗り越えて活躍する若手選手たちの「現在地」を徹底レポート。第7回は、川崎フロンターレからモンテディオ山形にレンタルされている宮城天を取り上げる。
川崎フロンターレからモンテディオ山形への期限付き移籍がリリースされたのが7月24日。今シーズンからV・ファーレン長崎に期限付き移籍していた宮城天は、第27節、山形が長崎と今季2度目の対戦を終えた直後のタイミングで山形の一員となった。
選手のストロングを前面に出すことを求める渡邉晋監督は、その頃、次のようなコメントで22歳の若者への信頼と期待を示していた。
「左サイドのアタッカーとして呼んだので、彼の良さを出してくれれば、もうそれがチームの利益に繋がると思います。天の良さというものは、やっぱり1対1で仕掛けられる、それで1人しっかり外せる、クロスなりシュートで終えることができる。そこのクオリティがある選手で、それがもう彼の良さ。それを出す。それが我われの利益になる。もうそれ以外は考えてないです」
宮城はさっそく、その週末の試合に先発し、山形デビューを果たす。第28節大分トリニータ戦。左ウイングでプレーし、長いサイドチェンジをピッタリのトラップで止めるなど高い技術を披露したが、得点には絡むことなく、67分で交代した。しかし、次の第29節藤枝MYFC戦では、右からのクロスに入り込み、ダイレクトで合わせて3分の先制ゴールを挙げている。後半にも枠内にシュートを放つなど、常に得点の可能性を感じさせながら74分までプレーした。
この藤枝戦はアディショナルタイムに後藤優介のゴールで勝ち越し、山形が3連勝。ところが、この2試合のアウェイゲームを経ていよいよホームでのデビューというタイミングで、宮城は突如、練習グラウンドから姿を消した。藤枝戦は8月5日。その後、筆者が再び練習場で宮城の姿を確認したのは9月12日のことだった。山形で3試合目の出場を果たしたのは、そこから約1カ月経った10月8日。9試合ぶり、シーズンも残り5試合という時点だった。
“左ウイング急募”の中で加入、即結果を残す。ところが…
この移籍が成立した背景には、山形側、宮城個人双方の事情が関係している。……
Profile
佐藤 円
1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。