「お帰りなさい。ヘンキーの伊東純也」古巣凱旋で成長を証明。トルコ対日本インサイドレポート
日本代表欧州遠征2023徹底分析#7
カタールW杯でベスト16入りした森保一監督率いる日本代表は、続投が決まった指揮官の下で新チームが始動。「ポゼッションの質を上げる」ことを新たなテーマに掲げ、特に[4-3-3(4-1-4-1)]で臨んだ6月のエルサルバドル(〇6-0)、ペルー(〇4-1)との2連戦では新しいチャレンジへの可能性を感じることができた。9月のドイツ、トルコとの2連戦は、第二次森保体制の最初の分岐点になるだろう。約4カ月後のアジアカップ、そしてその先のW杯予選に向けて、様々な角度から欧州遠征を分析してみたい。
今回は、ヘンク凱旋を果たした一戦でトルコ相手に勝負を決める4点目のゴールを奪った伊東純也にフォーカス。現地取材した中田徹氏に古巣の反応、STVV立石敬之CEOの解説も併せて伝えてもらおう。
70mの独走、そして「亨梧に出そうかなと思ったけど……」
日本代表はフレッシュな力が躍動し、36分までに伊藤敦樹の先制弾、中村敬斗の2連続ゴールでトルコを3-0で圧倒した。トルコの中盤陣の中には明らかに戦意を喪失した選手もいた。しかしトルコは44分、オザン・カバクのゴールで息を吹き返す。61分にベルトゥー・ユルドゥルムが得点し、日本のリードは瞬く間に1点になった。
攻勢に出るトルコは73分、74分と続けて決定機を得たが、前半アディショナルタイムから中村航輔に代わって日本ゴールを守るダニエル・シュミットのセーブで事なきを得た――。
そんな嫌な空気を日本代表の14番がビッグプレーで一掃した。トルコのCKを凌いだ日本はクリアーを拾った伊東純也がイスマイル・ユクセクをワンタッチでかわしてからロングドリブルを敢行し、敵陣ペナルティエリア奥深くまで侵入。たまらずユクセクが伊東の体をつかんでしまい、日本がPKを得た。
「最初、(古橋)亨梧が空いていたので普通に(パスを)出そうかなと思ったんですけど、CBが亨梧の方に食いついたので、もう一個入って行って自分で行こうと思ったら相手がファウルをするしかなかった、ということです」
俺が絶対にPKを蹴る。チームメイトに絶対にボールを渡さない――。ペナルティスポットに後ろに立つ伊東にはそんなオーラがあった。ペナルティエリアのすぐ外で待機する古橋、久保建英は『リバウンドが来たら絶対に触るんだ』という強い意思を感じた。この3人は、給水タイムに気付くことなくゴールを見据えていた。
70mの長駆ドリブル直後だけに、伊東の息はやや乱れていた。それでもPKを促す主審の笛が鳴ると、冷静に右隅へPKを決めた。
「ヘンクのスタジアムでしたし、『自分で蹴ろう』と(PKの判定を)もらった瞬間、決めてました」
78分で4-2。もう日本は大丈夫だろう。見事に試合を締めくくった、伊東のヘンク凱旋ゴールだった。
文字にすると素っ気ないインタビュー。でも丁寧な口調、優しい眼差し
試合後のインタビューエリアには、ヘンク入団から退団時まで伊東のことを追い続けた、日本語のできるベルギー人記者がいた。その彼女が地元紙『ヘット・ベラング・ファン・リンブルフ』紙の取材をサポートする。その懐かしい再会に伊東は笑顔が絶えない。
――お元気ですか?
「元気です」……
日本代表欧州遠征2023徹底分析
Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。