J3から地道に積み上げてきた「自分らしさ」の結実。アルビレックス新潟・藤原奏哉インタビュー
特集:新アルビスタイルの真髄に迫る#2
名実ともにJ2ナンバー1の右サイドバックになったと言っていいだろう。アルビレックス新潟に在籍する藤原奏哉のことだ。90分間上下動できる抜群の運動量と、その時々の状況を敏感に察知して、最善の選択をできるプレースタイルが、J2優勝とJ1復帰を成し遂げたアルビレックスの欠かせぬピースとして、眩く輝いた。J3からスタートしたプロキャリアで、着々とステップアップを続けている27歳が感じた今シーズンと、見据えるこれからの未来を語る言葉に耳を傾けよう。
『ああ、サッカーやってるなあ』と実感したビッグスワンの大声援
――まず、2022年シーズンが終わった今、どういう想いがありますか?
「1つの達成感はありますし、昨日(10月30日)のプレーオフを見ていると、やっぱり自動昇格で上がれることの意味は凄くあるなと感じましたね。1年間戦ったのにJ1へ上がれなかったり、最後に悔しい結果に終わってしまったりというのは、チームとしても、個人としても、かなり悔しさが残ると思うので、リーグ戦で一番上に立てた達成感はかなりあります」
――10月にシーズンが終わることもなかなかないと思いますが、今はどんな日常ですか?
「最終戦が終わって、1週間ほど休みがあって、昨日から徐々に体を動かしながら、今日もミニゲームをけっこうやったので、『意外とやってんな』っていう感じです(笑)」
――ああ、もっと軽いトレーニングだと思っていたのに(笑)。
「ウチのフィジカルコーチは厳しいので(笑)。あとは若手がエリートリーグも含めた試合があって、そこに向けてのコンディション調整もあると思うので、ケガしないようにやっています」
――J1昇格とJ2優勝、この結果については率直にいかがですか?
「個人的にJ2は今年が3年目で、1年目も2年目もプレーオフには進める順位にいたんですけど(※2020年はギラヴァンツ北九州で5位、2021年は新潟で6位)、この2年はプレーオフも開催がなくて、1位か2位に入るためには、あと勝ち点20ぐらいは足りない年が続いていたので、その20ポイントを今年獲れたというのは、本当に成長しているなと感じます。それに、ただ昇格するだけではなくて、優勝できたということは、自分のキャリアにとっても、過去に1回は経験している新潟にしても、全然意味が違ってくるのかなとは思っていますね」
――今シーズンの新潟はいわゆる「見ていて面白いサッカー」のような内容と結果を高いレベルで見せてくれたように感じますが、そのあたりの手ごたえはいかがでしょうか?
「今年は『負けた!』という感じの、内容も悪かったし、結果も付いてこなかったような試合は本当にないんじゃないかというぐらい、負けた試合も、引き分けた試合も、自分たちが主導権を握ってプレーできていましたし、開幕してから少し勝てなかったですけど、『あとは点を獲るだけ』というような感じでした。去年も良いサッカーはしていましたけど、結果が付いてこなかっただけだと考えていたので、そこで今年はみんなが守る時は守ることだったり、さらに追加点を狙いに行くことだったり、そういう意識が本当に強かったと思います」
――藤原選手が新潟に来てからコロナ禍でなかなかサポーターが声を出せなかった中で、今シーズンの終盤はビッグスワンの大声援を受けて戦えましたが、その力はどのように感じましたか?
「それはかなり違いました。声を出せない時から観客の方々がたくさん入ってくれていましたし、拍手や太鼓の音は聞こえていましたけど、やっぱりあのサポーターの想いというのは声に乗っていると思うので、それを肌で感じることも、身体で感じることもできましたし、自分たちが良いプレーをした時や、ゴールを決めた時には、全然音が違うというか、久々に『ああ、サッカーやってるなあ』ということは本当に感じましたね」
――それは久々の感覚なんですね。
「久々というより、ここまでの大声援というのは、人生で初めてぐらいじゃないですかね」
――『アイシテルニイガタ』って凄く良いフレーズですよね。
「はい。新潟に入る前から、中継でもゴール裏にかかっている各チームの横断幕を見たりしていたんですけど、あれは覚えやすいフレーズですし、でも、響く言葉というか、僕も凄く良いと思います」
――愛されている感じがします?
「愛されている感じがしますし、『みんな新潟が好き』というあの雰囲気は、それだけでいいんじゃないかなって凄く感じます」
元フォワードの“嗅覚”で奪った3試合連続ゴール
――個人としてはリーグ戦41試合に出場して、4ゴール2アシストという数字が残っています。この結果に関してはいかがですか?
「全試合に出たかった想いはあります。でも、それは最初にコロナの影響で全体のコンディションを考えて、監督やコーチがマネジメントした部分なので、仕方ないかなと。去年に比べればゴールを獲れたところに関しては、自分が決めていれば勝ち点を積めた試合も去年はあったので、それを今年で達成できたのは凄く成長できたなと感じます。あとは、守備面でも中盤戦までクロスからの失点が多かったので、そこは試合をするにつれて、周りの選手と話し合って、どう守ればいいかということをどんどん改善できたので、後半戦は失点が少なかったと思いますし、1試合1試合を通して出た課題を自分で受け止められたシーズンでしたね」
――やはり第29節からの3試合連続ゴールは圧巻でしたが、あれは何だったんですか(笑)?
「何だったんですかねえ(笑)。あの時期はなかなか勝てなかったですけど、自分の中では良い手ごたえがあったので、気付いたら3試合連続になっていたという感じでした」
――ストライカーっぽいゴールもありましたからね。
「まあ、昔はFWもやっていたので、ゴールを獲る能力があるかどうかはわからないですけど、嗅覚だけはあるんですよ(笑)」
――カッコいいです(笑)。栃木SC戦(第31節)のゴールは時間帯も獲り方も含めてスーパーでしたけど、アレは自分でも良いゴールだと思いましたよね?
「まず、(松田)詠太郎にボールが出た時に、相手も前がかりに来ていましたし、『たぶんこれは行けるな』と思って走ったら、自分の前がかなり空いていたので、『これはもうオレでしょ』って(笑)。詠太郎に心の中で『出せ!』と言っていたら、メッチャ良いボールが来たので、あとは当てるだけでしたね。あまりああいうシュートは打たないんですけど、本当に感覚で巧く当てられた感じはありました」
――あそこまで走ったけど、シュートをふかすことってよくあるじゃないですか。あれを決め切ったのが凄いなと。
「とりあえずふかさないことだけを意識して打ったら、本当に良いところに行きましたね」
――そのままサポーターのところまで駆け抜けていく一連がまた決まっていて。
「スプリントして、あそこまで行って、また走りながらシュートを決めたので、『これは行くしかないな』って。なかなか点を決めてもサポーターのところには行けないじゃないですか。僕が点を決める時って、けっこう同点のシーンだったりが多かったので、『今日行っておかないと、次はいつ行けるかわからないじゃん』って思って、もう勢いで行きました(笑)」
「もともと右サイドバックは僕のポジションですから(笑)」
――序盤戦は長谷川巧選手とローテーションでの起用でした。あれは今から振り返るとどういう経験でしたか?……
新アルビスタイルの真髄に迫る
Profile
土屋 雅史
1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!