デシャンやリザラズが生まれ、 ラポルトやグリーズマンも過ごした…未知なるフレンチバスクをたずねて
【アスレティックの 「純血主義」は今――異端なる バスクサッカー をたずねて#4】
サッカー界でバスクと言えばスペインが真っ先に思い浮かぶが、バスク地域にはフランス南西部も含まれている。もう一つのバスクと言える、フランス国内のバスク地域を小川由紀子さんが現地取材。知られざるフレンチバスクのサッカーいついてレポートする。
フランスのバスク地方を代表するスポーツといえば、スカッシュに似たバスク・ペロタという伝統競技もあるが、なんといっても「ラグビー」だ。バスク地方を含むヌーベル・アキテーヌ地域圏は、フランスで2番目にラグビー競技人口が多く、プロリーグ「TOP14」に参戦する14クラブのうち4クラブがこのエリアに集結している。
そのうちの一つが、バスク地方の中心都市バイヨンヌを本拠とするアビロン・バイヨネ(Aviron Bayonnais)。近年は優勝から遠ざかっているが、過去3回リーグタイトルを勝ち取っている古豪だ。同クラブは1904年に創設された複合スポーツクラブで、現在は合気道やペロタ、バスケットボールなど22部門を備える。クラブ名にアビロン(=ボート競技)がついているように、ウォータースポーツがその始まりで、2014年のリオ五輪には代表選手も輩出している。
現5部の最も“ビッグ”なクラブ
サッカー部門の正式な発足は1935年。そして現在5部にあたるアマチュアリーグに所属している彼らが、フレンチバスク地方で最も“ビッグ”なサッカークラブだ。これまでの最高位は3部の「ナシオナル」でプロリーグ経験はないが、バイヨンヌが生んだヒーロー、現在フランス代表監督を務めるディディエ・デシャンの出身クラブであり、ホームスタジアムには彼の名前がつけられている。
デシャン以外にも世代別を含む代表チーム経験者は複数いて、現役ではサンテティエンヌのGKステファン・ルフィエ、レアル・ソシエダからレガネスにレンタル中(取材時。現在はエイバルにレンタル中)のケビン・ロドリゲスらがアビロンの出身。マンチェスター・シティのDFエメリク・ラポルトも2009-10シーズンに在籍した。また、国内のプロクラブからは見向きもされなかった少年時代のアントワーヌ・グリーズマンをソシエダに紹介したのも、かつてアビロンを率いたエリック・オラッツで、ソシエダ入団が決まった最初の1年間、グリーズマンはバイヨンヌに住んでこのクラブで育成を受けていた。
クラブの規模、さらにはラグビー人口が圧倒的に多い環境を考えれば、これだけの選手を輩出しているのは素晴らしい。その秘訣は、バスク人のキャラクターにあると、かつてデシャンとともにプレーした元アビロンのGKジェラール・パルモンティエさんは言う。……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。