18-19 Playback For The Coming Season#2
8月に入り、5大リーグ開幕の足音が近づいてきた。プレシーズンマッチを重ねチーム作りを進めている各クラブは、順調に歩みを進められているのか。その進捗を測るうえでは、昨シーズンのチームが抱えていた課題を正確に把握しておくことが欠かせない。
この昨シーズンの振り返り記事で課題を再確認することで、来たる19-20シーズンに向けた準備は的を射ているのか、的外れになってしまってはいないか、判断する手がかりにしてほしい。
LEVERKUSEN | レバークーゼン
フロントの決断がチームに成功をもたらした。ウィンターブレイクにハイコ・ヘアリッヒ監督を解任し、昨シーズン途中までドルトムントを率いていたボスを新監督に招へい。ELではGSを首位突破し、前半戦を2連勝で締めくくっていた指揮官を切るドライな人事を敢行し、クライフの信奉者であるオランダ人にCL出場権確保の望みを託した。
4位に勝ち点7差の9位につけていたチームを預かったボスは、即座に独自カラーを打ち出す。手始めに[4-2-3-1]からオランダ流の[4-3-3]に変更。ポゼッション重視の明確なスタイルを浸透させ、後方から丁寧に繋ぐ意識をグッと高めた。このシステムチェンジで鍵になったのが、インサイドMFにウイングのユリアン・ブラントとトップ下が主戦場だったカイ・ハベルツを配したこと。チーム随一のテクニックを誇る両雄が頻繁に近距離で絡むようになり、攻撃のクオリティ向上やバリエーションの増加が実現したのだ。
ヘアリッヒ前体制下の課題だった遅攻の質が高まると同時に、昨シーズンまでの強みだったスピード感あふれる速攻も機能。ブラントやハベルツ、中盤の底に配された司令塔シャルレス・アランギスを中心に素早くパスを繋ぎ、両翼に配された2人の快足ウインガー(ベイリーとベララビ)も異彩を放った。そのテンポの速い仕掛けは、前半戦のドルトムントを彷彿させたほど。『キッカー』誌は「バイヤー・エクスプレス」(特急)と称賛している。
ELではラウンド32でクラスノダールに敗れたものの、国内リーグでは前半戦比でプラス10の勝ち点34を積み上げ、見事にCL出場圏内の4位フィニッシュ。後半戦のゴール数はバイエルンに次ぐ43得点と、圧倒的な攻撃力も誇示した。ただ、ブレーメンやRBライプツィヒとの一戦で不安を露呈したのも事実。連動性の高いハイプレスでビルドアップを妨害された際、攻撃の歯車が噛み合わなくなったのだ。その点の改善が新シーズンの課題になる。また、ドルトムントへの完全移籍が決まったブラントの穴埋めも不可欠だ。このドリブラーほどの打開力は備えていないが、ホッフェンハイムから加入する技巧派MFのケレム・デミルバイがキーマンになるだろう。
MVPを1人挙げるなら、リーグ3位タイの17ゴールを挙げたハベルツを置いて他にいない。ただ、監督交代の博奕を打ったルディ・フェラー(強化部門の責任者)、その賭けを勝ちとして成立させたボスの存在なくして、ハベルツの大爆発もCL出場権の獲得もあり得なかったはずだ。
Photos: Bongarts/Getty Images
Profile
遠藤 孝輔
1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。