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番組ディレクター経て成長!? カルピン、満を持して監督業再開

2018.04.11

フットボール・ヤルマルカ


 2カ月半の中断を挟んで3月から再開したロシアプレミアリーグ。今季は下馬評を覆してロコモティフ・モスクワが首位に立っているが、タイトルから遠ざかって久しい彼らが終盤の重圧に耐え切れるのか、または第2グループに居並ぶ強豪たちが地力を見せて独走を阻むことができるのか、優勝争いは例年通り最後までもつれる可能性が高い。一方で、欧州カップ戦出場圏内となる5位以内の顔ぶれは確定的で、上位陣とその他のクラブの実力差がより明確となったシーズンと言えるだろう。

 最も期待を裏切った脱落組となってしまったのは、昨季はクラブ史上初となるCL出場を果たしたロストフだ。過去2シーズンの欧州カップ戦出場で得た収益も助けにはならなかったのか、スポンサーのロストフ州から借金の返済をめぐって訴訟を起こされ、MFエロヒン(現ゼニト)の給料未払いを理由に補強禁止処分(現在は解除)が下るなど、不安定な経営が続いている。

 昨季終了後に主力の大量流出を防げず、自慢の守備力は維持しているものの得点力不足が痛手に。前半戦を10位で終えると、クチュク監督の解任を決めた。そして、代わりに迎え入れたのが国内随一のカリスマ指揮官、元ロシア代表のワレリー・カルピンである。


古巣対決は「クビになってなければ」

 「今はリーグの半数以上のクラブが5バックを採用している。代表もそうだ。この国のサッカーは守備的な傾向が強くなっている」

 現在のロシアにおけるトレンドをやや批判的に分析するカルピンにロストフが期待するのは、攻撃陣の再構築。中断期間中のキャンプではさっそく4バックを基本に、より点を取るための戦術を模索していた。

 ただ、ロシアサッカー界屈指のレジェンドながらその指導力には疑問の声も。無冠に終わったスパルタク・モスクワ時代は積極的に多くの若手を起用したものの、現在もトップレベルに残る者はおらず、その後指揮したスペインのマジョルカやアルマビル・トルペドでも短命に終わっている。

 元ロストフのGKプレティコサが「今のロストフには彼のようなモチベーターが必要」と述べるように、カルピンの売りはその求心力だ。気性の激しさは現役時代そのままで、たった一言でインタビューを終えたり、逆に記者を質問攻めにしてみたりと話題性には事欠かない。

ソシエダ時代、“フェノメノ”ロナウド(左)と競り合うカルピン。02-03には中心選手としてリーグ2位となったチームを牽引。ロシア代表として94年と02年W杯に出場したロシアを代表する名手だ

 ロシア人選手は「規律をもたらす」と歓迎するが、外国人選手は時に「厳し過ぎる」と音を上げる。その歯に衣着せぬ物言いが人気を呼び、ここ数年はスポーツ専門チャンネル『マッチTV』のチーフディレクターを務めた。「メディアの仕事で多くの試合を分析したことが役立つ」と自身の成長を実感しているようだ。

 5月の古巣スパルタクとの試合について質問が飛ぶと「その時までにクビになってなければ考える」と相変わらずの“カルピン節”で切り返していた49歳のレジェンドの前には再開後、いきなり上位4クラブと対戦する厳しい日程が待ち受けている。

3月17日のアルセナル戦で、身振り手振りを交えて指示を送るカルピン。前述の上位勢との連戦を終え就任後5試合勝利なし(2分3敗)、昇降格プレーオフ圏の13位に後退してしまったが、ここから巻き返せるだろうか


Photos: Getty Images

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ロストフワレリー・カルピン

Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。

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