チーム戦術新解釈 攻⇄守4局面解説#2
5月14日に締め切られるロシアW杯予備登録メンバー(35人)提出前最後の代表戦となり、選手にとってもチームにとっても重要な意味を持つこの3月のインターナショナルマッチウィーク。着々と準備を進めている強豪国がどんな戦い方を志向しているのか、「攻撃」と「守備」だけでなく「攻から守への切り替え」「守から攻への切り替え」も含めた4局面にフォーカスして分析。各国の仕上がりをチェックする際の参考にしてほしい。
ENGLAND
イングランド
予選:8勝2分0敗
1.8得点0.3失点(1試合平均)
監督:ギャレス・サウスゲイト
47歳|イングランド
16年11月就任
母国の誇りと、国民の信頼を取り戻す――。EURO2016での惨敗で失墜した代表人気を回復させようと燃えるサウスゲイト監督の理想は、後方から丁寧にビルドアップして試合を進めるポゼッションスタイル。ただ、スペインのようにショートパス一辺倒でフィニッシュまでいくわけではなく、実際はボールを奪ったらまずはタテが鉄則で、ロングボール1本勝負の場面も多々。つまり「ポゼッションの時間も作るが武器は速攻」が正しい。骨子は良くも悪くも伝統の英国流、プラスαでポゼッションも有効活用。これが目指す道だ。実際、いずれも0-0だった11月のドイツ戦、ブラジル戦ではパス回しで時間やテンポをコントロールしようと努める時間帯も見て取れた。
トッテナム勢が中心の現チームでは、彼らの十八番である攻守のトランジションにも重きが置かれている。ボールロスト直後は、まずハイプレスで敵のカウンターを牽制してからリトリートでブロック守備。ボール奪取後は両ウイングバックが素早く飛び出し、前線3枚との5レーン攻撃に移行する。これがハマれば、両翼を含む攻撃陣には若く魅力的な人材がそろうだけに、大いに期待が持てる。
だからこそ、守備+組み立てが求められる3バックと、攻守の繋ぎ役でビルドアップにも参加するボランチの出来がカギだ。この質が低いと、イングランドの試合は単調で退屈と言われがちになる。効果的なくさびのパスを増やして前線の破壊力を生かすには、球出しに定評があるCBストーンズや、現状控えだが司令塔タイプのMFウィンクスあたりの奮闘が必要になってくる。
ただ、もちろん同時にチーム全体の守備の安定や中盤のハードワーク、運動量をないがしろにするわけにもいかないため、大崩れしない守備と魅力的な攻撃のバランスがうまく取れた人選・並びを模索したい。特にストーンズを“ダビド・ルイス役”にして昨季チェルシーを模したような速攻の形ができれば、ハイプレス→5レーンの連係でショートカウンター勝負のスパーズ流と、ブロック守備→ロングカウンターを得意とするチェルシー流のハイブリッドになれるかもしれない。イングランドの伝統とプレミアのトレンドを、うまく融合させたいところだ。
■チーム戦術新解釈 攻⇄守4局面解説
・指揮官が変えた「前」への意識。スペインの猛プレスと“横走り”
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