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浦和対ドルトムントから学ぶべき、レベルとは違うJと世界の「差」

2017.07.18

 「Jリーグを見ていると、そこ(ディフェンス)が一番違うと思います。相手のミス待ちで敵が(ボールを奪いに)来ないですから。向こうはガンガン来ます」
『月刊フットボリスタ』のインタビューで、ドイツと日本の違いを問われた内田篤人の言葉だ。

 この浦和レッズ対ドルトムントは、長年ブンデスリーガで戦い続けてきた内田のコメントが、端的に表現された一戦であったように思う。

 スタッツを見ると、ポゼッションは前半終了時点で浦和の33%に対しドルトムントが67%、試合終了時点でも35%対65%と大差がついた。ボールを保持し、失ってもすぐに回復するドルトムントに、浦和の選手たちが振り回されていたという構図が見て取れるが、この数字の生んだ要因をもう少し詳しく紐解いてみたい。

“ズレ”が加速させた負の連鎖

 来日は試合の前日、さらに当日は日が落ちても蒸し暑さの残る厳しいコンディションの中、ドルトムントの選手たちはギアを上げて全開で試合に入ったわけではなかった。それはパス回しのスピードやオフ・ザ・ボールの動きの少なさに表れていた。

 とはいえ、手を抜いていたのかと言うと決してそんなこともない。自らのボールロスト、あるいは浦和のファーストパスが通った瞬間には素早くボールホルダーを囲い込み、奪い返す。習慣として染みついた出足の鋭さが随所に見られた。抜くところは抜き、締めるところは締める。自チームの状態を踏まえて、今できる最善のプレーをした、というのが実情だろう。

 そんなドルトムントに対し、あくまで自分たちのスタイルを貫こうとした浦和だったが、DF森脇良太が試合後、「持たせたというより持たれた、の方が近いです。ポゼッションしようとしても、相手のプレッシングが速かった」と振り返ったように、序盤から相手のプレスの前に前進できず、自陣に釘づけにされる時間が続いた。

 ここまで押し込まれたのはドルトムントの圧力だけではなく、浦和の守備陣形にも原因があった。試合中に3バックと4バックを使い分け、守備時には両ウイングバックが下がり5バック化するのが浦和の守り方だが、相手の3トップを5人で見る形となったために、中盤中央で3対2の数的不利に。最終ラインを厚くしたことで最後のところではね返せたものの、セカンドボールを拾えずドルトムントの波状攻撃を受ける負の連鎖に陥ってしまったのだ。

 これに関して、中盤でフル出場したMF柏木陽介に話を向けると「Jリーグでは(浦和が)これだけ回されることはない。ブロックを作ってしっかり守っていた分、正直(中盤中央の)俺と阿部さんの負担は大きかった」と語っている。

GKと3バック以外の選手で唯一フル出場した柏木。ピッチ中央で、ドルトムントの圧力を90分間受け止め続けた(左はゲッツェ)

 このマッチアップのズレと、プレスによってボディブローのように体力を削られたことが、後半のドルトムントの逆転劇へと繋がっていった。後半から登場したエムレ・モルが挙げた2つの得点シーンは、その象徴だったと言っていい。

 76分の1点目のシーンでは、モルがDF槙野智章を振り切ったシーンがクローズアップされた。そのスピードと技術が目を見張るものであったことは間違いない。ただこの時、浦和の3枚のCBがCFイサック1人を見る形となっている一方で中盤の枚数が足りておらず、簡単なパス交換だけでスピードに乗ったモルに前を向かせてしまっており、チームとしての応対も後手に回っていたことがわかる。
続く79分のシーンでは、槙野は同じ轍を踏まないよう、早めに最終ラインを飛び出しモルを捕まえようとしている。しかし、1本横パスを挟まれたことでサイドのケアを意識してモルとの距離を離してしまった。このわずかな立ち遅れが命取りとなり、急いでチェックに行ったものの懐に入り過ぎ、巧みなターンでかわされてしまったのだ。

 柏木は「後半、行くのか行かないのかちょっと中途半端になった部分はあったと思います。俺が疲れていたので(他の選手に)『下がって』って話していたりもしたんですけど、そのあたりで(意思疎通が)うまくできなかった部分はありました」と、中盤での対応に難しさがあったことを認めている。

 万全ではないドルトムントの、決してフルスロットルではないプレッシングであっても、Jリーグではほとんどの試合でボールを支配し試合を進める浦和にポゼッションを許さず、押し込むだけの圧力があったという事実。これは重く受け止めるべきだろう。

 ただし、これは単にJリーグと世界のトップリーグとのレベル差だけの問題ではない。冒頭の内田のコメントにもあるように、ドイツをはじめ世界ではスタンダードになっているアグレッシブな守備スタイルが、Jリーグでは根づいていないことによる“慣れ”の問題でもあった。

 実際、柏木も「そのあたり(意思疎通)がうまくいけば、もうちょっとうまくやれるんじゃないかなという感触はありました。あとは慣れじゃないですかね」と、課題とともに手ごたえを口にしていた。

 Jリーグがレベルアップするために必要なもの、それが如実に示された一戦だったのではないだろうか。

Photos: Getty Images

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ドルトムント浦和レッズ

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。

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