「ボランチ(セントラルMF)で勝負する」と誓って挑んだ今季の中山雄太だが、日本代表の森保一監督も、ズウォレのジョン・ステーヘマン監督も、中山のポリバレント性を放ってはおかない。
各ポジションで実力を発揮
今季、中山が初めてスタメンに抜擢されたのは、オランダリーグ第3節のスパルタ戦だった。それからの中山の実績は下記の通りだ。
9月26日 ズウォレvsスパルタ(4-0) セントラルMF/先発/74分間出場/1ゴール/マン・オブ・ザ・マッチ
10月9日 日本vsカメルーン(0-0)セントラルMF /先発/フル出場
10月13日 日本vsコートジボワール(1-0)左SB/ 先発/フル出場
10月18日 ズウォレvsPSV(0-3) セントラルMF /先発/フル出場
10月21日 RKCvsズウォレ(1-1) セントラルMF→左SB(短時間)/先発/フル出場
10月24日 ズウォレvsウィレム2(0-0)左SB→CB/先発/フル出場
RKC戦の中山はほとんどの時間帯をセントラルMFとしてプレーし、小気味よいパスでチームの攻撃を組み立てた。また、65分にラインダーズが決めた先制ゴールのシーンでは、しっかりアタッキングサードに飛び出して、アシストしたテディッチに好パスを供給した。守備面では「ボールを失った後の切り替えを誰よりも早く」という意識で取り組んでいるという。
ウィレム2戦では「SBとして攻撃面の良さを出していこう」と心がけてキックオフの笛を聞いた中山だったが、42分にブラム・ファン・ポーレンが負傷退場したことによって、CBにポジションを移した。
「僕としては、若干(プレーの)コンセプトが変わるじゃないですか。特にスコアが0-0でしたので。そういう意味では、僕がCBに回って相手をゼロに抑えて試合を終えることができたのは良かったです」
左SBとしては正確なサイドチェンジとアーリークロス、CBとしてはMFやFWがスムーズに次の攻撃に移れるようなパスを通すなど、ポジションに応じて自身の良さを引き出している。この試合ではゴールキックを受けた中山がキープしながらパスコースができるのを待って、グラウンダーでストライカーにロングフィードを通したシーンがあった。チームとしては自陣ゴール前からたった2本のグラウンダーで敵陣ペナルティーエリア近辺までボールを運べる利点がある。
「どこでもできるというのは僕の強みの1つ。監督、コーチから『お前はどこでもできるな』と言ってもらっています。ボランチへのこだわりというのはもちろんあります。でも、一つひとつしっかり全力でプレーしていけば、どこのポジションに入ってもできると感じています。今はメンタルがいい状態にあるから、どこでもできているのかなと思います」
「どこでもプレーできるように」
最近、左SBのパールがフィットしておらず、メンバー外。ウィレム2戦ではCBファン・ポーレンが前述通り負傷した上に、MFサイマクが退場した。いずれも中山がプレーできるポジションだけに、次節のトゥエンテ戦はどこでプレーするかわからない。
「『ボランチとしてプレーしたい』という気持ちを持ちつつも、複数のポジションを高いレベルでできればできるほど、チームの中で重宝される存在になると思うので、そうなればいいですね。どこで使われるかわかりませんが、どこでもしっかりプレーできるようなメンタルと技術を持ちたいと思います」
中山のような複数ポジションをこなせるフィールドプレーヤーは、オリンピックのような登録メンバーの人数が少ない大会で貴重な存在になるだけに、今後の進化に期待がかかる。
Photo: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。