これほど「ポジションの概念」から解き放たれた自由なチームも珍しい。昨年11月にニコ・コバチ監督の解任を受けてコーチから昇格したハンジ・フリック監督は、従来のシステム表記では表せないような「非対称流動システム」を創り上げ、3冠を達成した。
アグレッシブなプレスの復活
就任してまず手をつけたのは守備だった。ニコ・コバチ時代、バイエルンはボールを失ったら自陣にリトリートするやり方で、セットした守備に関してもミドルゾーンで待ち伏せするやり方を採用していた。いわゆるリスク回避型の守備スタイルだ。
フリックは“真逆”のスタイルを選んだ。高い位置からプレッシングをかけ、ボールを失ったら約5秒間のゲーゲンプレッシングを要求。ニコ・コバチの消極的姿勢に不満を持っていた選手たちはすぐに共感し、ペップ時代を彷彿とさせる「ハイプレッシング/ハイゲーゲンプレッシング」が復活した。レオン・ゴレツカは「守備が劇的に変わり、試合を支配できるようになった」と振り返る。
これに伴い選手起用もテコ入れした。運動量に課題のあるコウチーニョに代え、冷遇されていたトーマス・ミュラーをトップ下に起用。ニクラス・ジューレやリュカ・エルナンデスが負傷離脱中だったこともあり、アラバを左CBに、デイビス(本職は左ウイング)を左SBに本格的にコンバートした。フリックはのちに理由をこう説明した。……
Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。
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2024.08.01