ミランFWズラタン・イブラヒモビッチが9月24日、新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示した。規定に沿って自主隔離を行い、同日に行われたUEFAヨーロッパリーグ予選3回戦のボードー・グリムト戦を欠場した。
ミランへの批判は見当違い
通常であれば14日間の自粛隔離が必要となるが、PCR検査を2度行って陰性と判断され、その旨を保健当局に通知して検査を受ければ隔離措置を解くこともできる。パオロ・マルディーニ TDは地元紙に対し「7日間で復帰できるようになってくれれば、と願っている」と語った。
しかし、これを受けてネット界隈では、以下のような文言が一人歩きしている。
「イブラヒモビッチは陽性反応になったにもかかわらず、ミランは何事もなかったようにサッカーをしている。学校で同じことがあったらクラス全員が隔離措置を取らなければならなくなるのに。ウイルスは平等ではない」
著名なジャーナリストまでもがSNSで同様の発信をしているのだが、実際はミランの他の選手たちは検査の末に陰性が確認されたのでプレーできている。「ガイドラインに定められた措置だ。不用意に発言する前によく調べてほしい」という声も寄せられた。
検査の頻度も緩和される
その検査費用は各クラブの負担によるものなのだが、経費が経営を圧迫しかねないと懸念されていた。専門者委員会の指南を受け、クラブには4日ごとに全選手やスタッフ等への検査をすることが義務付けられていたが、経営持続性の観点から現場での負担があまりにも大きすぎると緩和の要請がなされていた。
そんな中の9月25日、ウイルス感染検査の頻度が緩和される見通しとなった。イタリア政府のビンチェンツォ・スパダフォーラ・スポーツ相は「専門者委員会がPCRの検査を試合の48時間前だけとすることを認めた」と発表した。今後は国際的な基準に沿い、試合の前だけに限定されることとなった。
イタリアサッカー連盟(FIGC)のガブリエレ・グラビーナ会長は「我われが目指していたもう1つの重要な目標が達成された」と、検査体制の緩和に至ったことを喜んだ。
これまで専門者委員会は、オフシーズンの間にサッカー関係者の間で感染者が増加していたことを理由に緩和要請を却下していた。しかし地元紙によれば、専門者委は「PCR検査器具を無駄に消費しないという理由も含め、検査頻度を海外の基準に合わせることを決めた」という。
過剰だった部分を緩和し、正常化へと舵を切ろうとするイタリアサッカー界。だが、その道のりはまだまだ険しそうだ。FIGCはスタジアムの観客収容についてもさらなる緩和を求めたが、これについては保健当局から「10月から開校する学校の方が優先検討事項だ」などと却下された。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。