数多くの若手GKがデビューしている2020シーズンのJリーグ。中でも傑出したパフォーマンスを見せているのが、鹿島アントラーズの沖悠哉だ。名門のゴールマウスを託された21歳は、ビッグセーブを連発。プロデビューから8試合7勝1分と不敗神話を継続し、鹿島の復調を牽引している。そんな若き新守護神のプレーを、GK研究の専門家レネ・ノリッチ氏に徹底分析してもらった。
2020シーズン、一時中断による過密日程と降格がない異例のレギュレーションが、Jリーグの雰囲気を変えた。特に目に見えて増えているのが「若手GKの積極起用」だ。前年までとは一変し、10代後半や20代前半でゴールマウスを任されるGKが急増。昨季から正GKとして定着しているサンフレッチェ広島の大迫敬介に続き、7人の東京五輪世代のGKがJ1デビューを果たしている。
その中でも筆者の目に留まったのが、鹿島アントラーズの沖悠哉だ。8月8日のJ1第9節、サガン鳥栖戦でデビューを果たした弱冠21歳の若者はどんなプレーを見せているのか、そのプレースタイルを分析していく。
初めに、今季出場を果たしている若手GK全体の特徴をいくつか確認しよう。まず述べておきたいのは、彼らの大半がすでに「準備ができている」選手だということだ。キャッチング、パンチング、ポジショニングやセービングなど、GKの土台となる基礎技術が身についており、J1の試合に出場しても遜色なくプレーできている。これは育成年代で質の高いトレーニングを受けてきたからだろう。練習からその実力を示し出場機会を勝ち取った印象を受ける。
また、ビルドアップに積極的に参加し、高い足下の技術を見せる選手も多い。GKもフィールドプレーヤーと同じように攻撃参加を求められるようになって久しいが、彼らは中学生・高校生年代から当たり前のように後方からの組み立てに参加し、足下の技術を早くから磨いてきたのだろう。
沖もそうした総合力の高いGKで、ここからは「ゴール・ディフェンス」「スペース・ディフェンス」「オフェンス・アクション」という3つの分析フレームワークを通じて彼のプレー分析を試みる。 まずは「ゴールディフェンス」。GKにとって最も重要な仕事、ゴールを守るプレーについてだ。
ゴール・ディフェンス
前への強い意識と無駄のない準備……
Profile
レネ ノリッチ
1994年生まれ、東京都出身。少年団チームにGKコーチがいたことがきっかけでゴールキーパーをプレーし始める。ゴールキックを敵陣ペナルティエリア内まで蹴り込んでいた経験あり(小6)。2018年頃からゴールキーパーのプレー分析記事をブログやnoteに載せ始める。スタジアムでサッカー観戦する場合、GKのウォーミングアップから見始める。好きな選手はヤン・ゾマー、ニック・ポープ。