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ユベントス移籍への布石か? スアレスがイタリア国籍取得へ

2020.09.19

 バルセロナのウルグアイ代表FWルイス・スアレスが9月17日、イタリア中部のペルージャに現れた。イタリア国籍の取得に必要な、イタリア語の能力試験を受けるためだった。同日午前中にバルセロナで練習を終えると、プライベートジェットでペルージャに移動。外国人向けのイタリア語能力認定を行う施設のあるペルージャ外国人大学へ赴いた。

 一般紙『ラ・レプッブリカ』によれば、スアレスは聴解や読解、会話などの試験を終え、国籍取得のために必要なB1レベルに合格したという。

現状では移籍は不可能

 スペインリーグの選手の話をイタリア発のニュースとして紹介した理由は、「スアレスの国籍取得はユベントス移籍への布石ではないか」と注目される事態になったからだ。

 バルセロナからの退団が噂されているスアレスにはユベントスも移籍先として噂に上っているが、彼らは制度上、獲得ができない状態となっていた。今夏の移籍市場において、アルトゥール (ブラジル)、ウェストン・マケニー(アメリカ)という2人のEU圏外選手2名を獲得してしまい、今シーズンの獲得上限に達してしまったからだ。

 つまり、ユーベがスアレスを獲得する場合は、選手に別途、ヨーロッパ国籍を取得してもらわなければならない状態になっていた。

 スアレスは直接の血縁にヨーロッパのルーツを持たない。スペイン紙『スポルト』によれば、ソフィア夫人がイタリアをルーツとする家系でイタリア国籍も有するため、スペインリーグにおいては“みなしEU国籍選手”としてプレーできていたようだ。

 だが、イタリアの場合は選手の国籍のステータスはあくまで国の制度に準ずる。イタリア人と婚姻を結んだ他の外国人と同様、国籍取得のためには別途手続きを踏んで認定を受けなければならないのだ。

即、移籍というわけではない

 だが、今回の出来事が即ユベントス移籍を意味するものではない、という見方もある。今回はイタリア国籍を得るための必要条件の1つをクリアしたに過ぎず、あくまで認可には至っていないのだ。

 『ANSA通信』は9月15日の時点で「国籍取得の手続きは移籍市場がクローズする10月5日までに間に合わないことが濃厚となったため、ユベントスはローマFWエディン・ジェコに標的を変えた」と報道していた。

 なお、今回の一件はサッカー界のみならず、イタリア国籍の取得を待っている外国人やイタリア政府にも波紋を広げている。

 イタリア人と婚姻を結んだ外国人が国籍を得るには、語学試験の合格とともに結婚後2年(海外においては3年)を経過しなければ条件が満たされないこととなっており、最近の法改正によって4年に延長されたばかりだった。

 「スアレスの移籍でこんなに早く国籍取得の可能性が出るということなら、4年という時間設定は単に政治的な選択に過ぎないのでは」という批判もネット上で噴出した。


Photo: Getty Images

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ユベントスルイス・スアレス移籍

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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