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スターに憧れたモハメド・サラー。自らも世界的スターに成長

2020.09.10

 誰にだってアイドルはいる。世界最高峰に上り詰めた男にも、憧れの存在はいるのだ。

 2017年にリバプールに加入して以降、UEFAチャンピオンズリーグ、クラブワールドカップ、そして悲願のプレミアリーグも制し、アフリカ年間最優秀選手にも輝いたモハメド・サラーにだって、当然憧れの選手はいた。

ジョーダンの人間性に感銘

 マレーシアのTV局『astro』の番組でインタビューに答えたサラーは、憧れの選手を聞かれると「フットボール選手ならばブラジルのロナウド、ジダン、トッティ」の3名を挙げた。28歳のサラーが子供の頃に活躍していたサッカー界の偉人たちである。

 だが「フットボール選手なら」と前置きしたのはなぜだろうか。実は、若い頃のサラーはボクシングやバスケットボールを見るのも好きだった。そして「ボクサーやバスケ選手のメンタリティ」にも興味があったというのだ。

 当然、シカゴ・ブルズ黄金期の最後の1年を追った『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』も見たという。サラーが感銘を受けたのはジョーダンの人間性だった。

 「あそこまでの大スターになったらイメージとかを気にするもの。でも彼は自分を偽らず、『俺のやり方はこうだ。俺を受け入れるかどうか決めろ』という姿勢だった。そこは凄いと思う」

 ジョーダンほどではないかもしれないが、サラーだって今では世界的なスター選手だ。先日、何気なく見た映画『イエスタデイ』でも彼の知名度をうかがうことができた。この映画は、一夜にしてこの世からビートルズの存在が消え、唯一記憶が残っていた売れないミュージシャンがビートルズの楽曲で注目を集めるというストーリーだ。

サラー自身も世界的スター

 『トレインスポッティング』などを撮ったダニー・ボイル監督と『ノッティングヒルの恋人』などの脚本を書いたリチャード・カーティスという、英国映画界の巨匠たちがタッグを組んだ作品である。純粋に映画として非常に面白いのだが、やはりダニー・ボイル作品なのでサッカーの小ネタに期待して見てしまった。

 すると、あるシーンで小ネタが出てきた。ロサンゼルスからリバプールに行きたいと言い出す主人公に、それを止めようとするアメリカ人のマネージャーが「リバプールにあってLAにないものって何よ?」と問い詰める。すると主人公は「モー・サラー、シラ・ブラック、豆料理、雨」と返答。日本語字幕は「サッカー」になっているが、主人公は真っ先に「サラー」の名前を出したのだ。

 スティーブン・ジェラードやケニー・ダルグリッシュでも良かったと思うが、2019年公開の映画では「サラー」になるんだと感心させられた。

 確かに、リバプールの現役選手の中から1人だけ名前を出すならサラーなのだろう。ジョーダン・ヘンダーソンでは名前が平凡すぎるし、トレント・アレクサンダー・アーノルドでは長すぎる。南野拓実はまだ加入していなかった。

 いずれにせよ、サラーが世界的なスター選手である証拠だ。だが彼は、どんなに名前が売れたとしても初心を忘れない。

 冒頭に紹介したインタビューで、彼は初めてファンに話しかけられた日のことを振り返った。エジプトで初めて試合に出たあと「写真を撮らせて」と頼まれ、サラーは「なぜ僕の名前を知っているんだい?」といろいろ問い詰めてしまったという。

 「本当にうれしかったよ」とサラー。「あの時のこともそうだし、それ以前のことも忘れないようにしている。プライバシーは減ったけど、僕は有名人に憧れていたのだから、実際に名前を知られるようになったことに文句は言えないよ!」

 初心を忘れないモハメド・サラー。新シーズンもゴールを量産し、チームに栄光をもたらすはずだ。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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