コロナ禍のクラブへの影響:レアル・マドリー
宿敵バルセロナがCLでの惨敗に端を発する混乱に揺れるのを尻目に、似つかわしくないほど静かな夏を過ごしているレアル・マドリー。ここまで資金を投じて獲得した選手はゼロ。かつて“銀河系軍団”と称された世界屈指のメガクラブの、不気味なまでの静寂の背景にある経営状況をおさらいしておこう。
昨季のリーグ中断後、すぐにERTEの申請に取りかかったバルセロナやアトレティコ・マドリーとは異なり、レアル・マドリーにはまだ余裕があった。フロレンティーノ・ペレスが会長に復帰した2009年以降、黒字経営を貫くことで3億2400万ユーロ(約405億円)もの“貯金”を蓄えていたからだ。
着手していた人件費抑制
パリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティら国家規模のパトロンを得て急速に資金力をつけてきたライバルに対抗すべく、レアル・マドリーは数年前から収入源の多様化に努めてきた。最も成長したのは全体の約45%を占めるようになったスポンサー契約、物販などのマーケティング収入で、パンデミック前の見積もりは昨季の2億9563万ユーロ(約370億円)から3億7128万ユーロ(約464億円)へ25.6%も増している。他にもソシオ年会費と年間シート代、試合のチケット販売による1億6133万ユーロ(約202億円)、親善試合や公式戦による1億968万ユーロ(約137億円)の収入などがあり、中小クラブの生命線となって久しいテレビ放映権収入の1億7928万ユーロ(約224億円)は約22%を占めるにとどまっている。……
Profile
工藤 拓
東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高-早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。06年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームで毎週リーグ戦を戦い、スペイン人たちと削り合っている。