8月22日、アルメレ・シティ(オランダ2部)との練習試合(1-1)で、フローニンゲンのCB板倉滉が存在感を示した。
攻撃参加で中盤が変化
3バックシステムの中央でプレーした板倉は、192cmの巨漢ストライカー、トーマス・フェルハイトに対してクレバーにマッチアップ。空中戦ではボールの落下地点へと先にポジションを取ってブロックしたり、MFアゾル・マツシワに競らせてカバーしたりして相手を完封した。
アルメレのトップ下、シアン・エマース(36分で負傷退場)に対しては、ボールが足下に入った瞬間、狩り取るようにボールを奪いにいった。
「2列目の選手に対し、前に向かって思い切りボールを奪いにいけるのは3バックシステムならでは」と振り返ったように、板倉は相手の攻撃を早めに摘んでいた。
ポゼッション時には、監督の指示ではなく自身の判断でタイミングを見計らい、CBからMFに上がっていった。
板倉が備える前方のスペースを見つけ出す能力や安定したボール運び、そして配球力は、チームメートも熟知しているのだろう。板倉がMFに上がることによって、フローニンゲンの中盤はダイヤモンド型になったり、トレスボランチになったり、セントラルMFマツシワとのポジションチェンジになったり、あたかも予めチーム戦術として組み込まれているようなバリエーションを見せていた。
ただし、本人はMFとしてプレーしていた経験、さらに将来はMFとして勝負したいという思いもあってか、「今日の相手は2部リーグのチームだったから、ある程度、余裕を持ってプレーできた。でも、中盤に上がった時にはもっとできるはず」と今後、1部リーグの強豪を相手にすることを見据えて改善点を口にしていた。
DFとしての課題も多い
課題もいくつかあった。例えばサイドにやや引っ張り出された時に、背後のCBと相手FWの位置を確かめずにオフサイドトラップを仕掛けにいって失敗した場面。板倉は首を小まめに振りながら状況を把握する選手だが、一瞬、集中力を欠いた。
また、フェルハイトに代わって投入された少しサイズの小さいストライカーと対峙するようになると、相手に食い付き過ぎて裏を狙われるシーンもあった。最終ラインの一員としては、単純な2本、3本のパスで守備網を破られピンチを招いたことも修正すべき点だ。
とは言え、アルメレ戦で魅せた板倉のパフォーマンスには期待が高まる。この試合が現役復帰戦となったアリエン・ロッベンは予定通り30分ほどでベンチに退いた。
キャプテンマークはロッベンからCBバルト・ファン・ヒントゥム、そして77分には板倉へと手渡されていった。第3キャプテンを任されたことについて「突然、今日になって言われて『じゃあ、やってやろう』と思いました」という板倉は、チーム内でのヒエラルキーでも自身の地位をしっかり築きつつある。
「練習はとても激しく、しかもチームの雰囲気がとても良いんですよ」
シーズン開幕を3週間後に控え、充実した表情で板倉は語っていた。
Photo: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。