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かつての怨敵ルチェスクに復活を賭けたディナモ・キエフの今

2020.08.29

 4シーズン連続でリーグタイトルを逃しているディナモ・キエフは、7月23日にルーマニア人のミルチェア・ルチェスク氏の2年契約での監督就任を発表した。長年ライバルのシャフタールを率い、監督業としては高齢となる75歳での就任は大きな驚きをもたらした。

「プライドがないのか?」

 ルチェスクは2004年からシャフタールを率い、12年間で8度のリーグ優勝、6度のカップ優勝、2008-09シーズンのUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)など数々のタイトルをもたらし、ウクライナ独立以来、長らくディナモ・キエフが1強独占していたウクライナ・プレミアリーグの状況を一変させた。

 2014年2月のウクライナ東部紛争の影響によって本拠地のドネツクを離れ、リビウ、ハルキウ、現在はキエフのオリンピスキ・スタジアムと本拠地を変更し続ける状態にあるシャフタールに対し、ディナモは近年リーグでは圧倒され続けている。

 熱狂的なサポーターからは「プライドがないのか?」と批判されながらも、かつての怨敵を招聘したクラブオーナーのイホーリ・スルキス氏も焦りは隠せない状況だ。

スーパーカップで宿敵を撃破

 8月21日に開幕したウクライナ・プレミアリーグでのオリンピク・ドネツク戦に4-1と快勝したディナモ・キエフは、ウクライナ独立記念日の翌日となる8月25日に開催されたウクライナ・スーパーカップで宿敵シャフタールと対戦した。

 20分にウルグアイ人MFカルロス・デ・ペナのゴールで先制すると、31分にはジュビロ磐田でもプレーしたルクセンブルク代表FWジェルソン・ロドリゲスのループシュートで追加点。37分にシャフタールのウクライナ代表FWジュニオール・モラエスに1点返されたものの、終盤にスペイン人FWフラン・ソルがゴールを奪い、3-1で勝利した。

 昨シーズンはリーグ優勝したシャフタールに勝ち点23も離されたディナモ・キエフにとっては大きな勝利となった。近年はFWビクトル・ツィガンコフ、MFミコラ・シャパレンコなどすでにA代表でも活躍している若手と、2019年のU-20W杯優勝メンバーのFWブラディラフ・スプリアハ、MFへオリー・ツィタイシビリ、DFデニス・ポポフなどの黄金世代を擁しながらも結果を残せていなかったが、かつてルチェスクが率いたシャフタール時代を彷彿とさせる攻撃的なサッカーにより、輝きを取り戻しつつある。

 前監督との確執や素行不良により、トルコのアンカラギュチュへ半年間放出されていたジェルソン・ロドリゲスも、ルチェスク政権により水を得た魚のように好調だ。

怨敵を受け入れられないサポーター

 7月23日に就任以後、ディナモ・キエフの中心的サポーターグループ「ウルトラ・ディナモ」は、フェイスブックで「ミルチェア・ルチェスクの就任は歓迎しない。一刻も早く退陣するよう我われは可能な限り抵抗するだろう」と発表。

 ルチェスクもこうした抗議の声を受け、就任4日後に退任を示唆するも、スルキスの説得により続投を決めた。

 ルチェスクの監督続投に納得がいかないウルトラスは、8月21日に行われたオリンピク・ドネツク戦に乱入。新型コロナウイルスの流行により、バレリー・ロバノフスキー・ディナモ・スタジアムでの試合は無観客で開催されたが、警備を突破した一部のウルトラスが発煙筒を持って「スルキス恥を知れ」「ルチェスクは家に帰れ」などと40分に渡って抗議を行った。

 多くの実績を残した名将ルチェスクであっても、ディナモ・キエフのサポーターにとっては受け入れがたい存在だ。勝利し続けることで信頼を獲得し続けるしかない。


Photo: Getty Images

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ディナモ・キエフミルチェア・ルチェスク

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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