バイエルンの優勝で幕を閉じた2019-20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ。決勝戦を前に、ラルフ・ラングニックは『キッカー』誌に向けて、今季の振り返りを寄稿している。
“成長”を示した4チーム
自身が築き上げたRBライプツィヒについては、準決勝ではパリ・サンジェルマンに挑戦者として臨むことを期待していたが、「あまりに受け身に回ってしまった」と指摘することを忘れなかった。
とはいえCLベスト4進出、そしてリーグ3位という成績には満足しており、チームのパフォーマンスも納得のいくものだったという。
今大会の準決勝の組み合わせはドイツ、フランスという2カ国のクラブが占めたが、ラングニックはCL準決勝レベルでの組み合わせは、その国リーグのレベルとは関係ないという。
「ラ・リーガやプレミアリーグがレベルを落としたとは思わないし、ブンデスリーガがこれら2つのリーグのレベルに追い付いたわけではない」とし、「CL準決勝や決勝の組み合わせは、各クラブがどのように現在のチームを構成し、成長したのか」を示していると自身の見解を述べた。
トップの基準となる4クラブ
そのラングニックから見て、現在の欧州トップの基準となるクラブは4つあるという。そのクラブとは、バイエルン、リバプール、PSG、そしてインテルの4クラブだ。
この4クラブのサッカーは、ボール保持時、非保持時に関係なく、現代サッカーにおける最先端のサッカースタイルとして洗練され、見本となるものだという。
これらの4クラブに共通するのは、「積極的なプレッシングと、ボールロスト時、相手陣内深くで見せる素早いトランジションからのゲーゲンプレッシング」、「ボール保持時はできるだけ速く直線的に相手ゴールに向かうことを狙っている」ことだという。
そのうえで「現代サッカーでは、ボール保持・不保持を問わず、あらゆるフェーズでゲームをコントロールできるように試みなくてはならない。それこそが成功のカギだ」と、試合内容と結果が一致している各クラブの成功の要因を挙げた。
PSGとリバプールでは、スターぞろいの前線の選手たちを、チームの一員としてサボらず組織的なゲーゲンプレッシングに積極的に協力できるよう導いたトーマス・トゥヘルやユルゲン・クロップの手腕を改めて評価。
同じくインテルのアントニオ・コンテのチームも、スター選手たちがボール保持、不保持のいずれのフェーズでも集団的にユニットとして機能している、と見ている。
そうしてマネージャーとしての経験から「これらの3クラブとバイエルンを加えた4クラブは、若く、成長できる可能性を秘めた若手選手といまだに勝利に飢えた経験豊富な選手をうまく混ぜ合わせながらメンバーを構成できるように注意を払っている」と、各クラブのチーム構成のうまさも分析した。
バイエルンは「過去30年で最高」
ラングニックはハンジ・フリック率いるバイエルンを称賛し、CLで成功を収めたチームを解説した。
「過去30年間で、戦術的にここまで高いレベルのサッカーをしたことはない。彼らは、ほぼ完璧なサッカーを見せた。自陣ペナルティエリア内の最後の守備の部分で若干の弱さを見せるが、それも些細なものだ。決勝で対戦するPSGよりも、さらにメンバーの年齢構成のバランスが取れている」
世界トップレベルのスター選手をバランス良くそろえたメンバー構成、その集団が1つの有機的なユニットとして機能するチーム、そして各戦術的フェーズで試合の主導権を握り、ゲームを支配するコンセプト。
これらの要因を統合し、形として実現できるマネージャーと監督の存在が、成功のカギを握るのだ。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。