レアル・ソシエダは8月17日、マンチェスター・シティからダビド・シルバの獲得を発表した。このリーガ・エスパニョーラのメルカート情報はイタリアを、とりわけローマの街を騒がせた。
シルバについてはラツィオが獲得に乗り出していたともっぱらの噂で、選手との間では契約合意に至っていたという情報もあったほどだ。
電撃契約にラツィオ側は激怒
シルバとマンチェスター・シティとの契約は、2020年6月に満了を迎えていた。契約期限が近づくたびにクラブとの契約更新に応じていた同選手だが、今季は契約を満了する意思をチームに話していた。
そこで、ラツィオがシモーネ・インザーギ監督の強い希望の下で選手側と接触をし、8月15日までの間に前向きな回答を得たと言われていた。複数の地元メディアによれば、提示した契約は2年間で年俸は400万ユーロ。税金やボーナスなどを加味し、年間1000万ユーロほどのコストをかけることも良しとしたという。
その間、複数のクラブがオファーを提示していたとの情報も流れていたが、イタリア国内ではラツィオ移籍が有力視されていた。イギリスのメディアによれば「15日の祝日以降にローマでメディカルチェックと契約のサインを行う」という段取りも付けられていたという。
ところが8月17日になって、あるクラブが割り込んだとの情報が発覚。そして、その日の夜にレアル・ソシエダが契約を発表した。『コリエレ・デッロ・スポルト』は「スペインに帰りたいという家族の意向が決め手となった」と報じていたが、憤懣やる方ないのはラツィオの側だ。
ラツィオはターゲット変更か
イグリ・ターレSDは8月18日、クラブ公式HPを通して「移籍のニュースを聞いた。ダビド・シルバは選手としては尊敬するが、人間としては尊敬しない」と厳しく非難。一方でシルバの父親であるダビド・ヒメネス氏はスペインのラジオ局『ラジオ・マルカ・ ドノスティア』で反論し、「何も決まっていなかった。ラツィオは代理人と話をしたが息子とは話をしていなかった。なのになぜ息子の人間性を槍玉にあげるのかわからない」と語った。
SNS上でのファンからの反応は「ウチを蹴ってソシエダに行くとは、何を失ったのかわかったもんじゃない」「確かに人間として尊敬できない」とシルバを非難する意見が複数あった。
その一方でクラブにも厳しい目が向けられ、「また虫のいい話を持ち上げておいてこれか」「つまりロティート(会長)は金を使うという意思を示したのだから、これで貧相な補強をしたら承知しない」というコメントも寄せられていた。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の電子版は「ラツィオはレアル・マドリーのハメス・ロドリゲスに目標を切り替え、ターレと親交のある代理人のジョルジュ・メンデス氏に接触を図っている」と報じた。
しかしハメスの場合には移籍金が発生し、シルバに提示した年俸額からさらに高い金額を要求されている、という報道もある。13年ぶりにUEFAチャンピオンズリーグに参戦することになったラツィオだが、長年にわたって緊縮経営をモットーとしてきた彼らが競争力のある布陣を揃えることができるのか注目される。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。