8月9日夜にコレア、ブルサリコと2人の陽性者が見付かり、UEFAチャンピオンズリーグ参戦が不安視されていたアトレティコ・マドリーだが、リスボンへの旅は許されることになった。翌10日の再検査の結果、残りの選手やスタッフの結果は陰性だったからだ。
現状では試合開催は可能
UEFAのプロトコルによると、最低13人の選手(ベンチ入り2人のうち1人はGK)が試合に出場できる状態であれば、13日のRBライプツィヒ戦は決行されることになっていた。
だが、チームが半減するほど大量の感染者が出れば、開催地のポルトガル政府がチームの入国を拒否していただろう。陽性者が出た場合の移動と試合開催の是非の最終決定権は、UEFAでなく地元政府にある。
大量感染の恐れはリアルにあった。
Aマドリーは7月19日にリーガが終了した後に休養に入り、同26日のPCR検査での全員陰性の結果を待って全体練習を再開していた。
その後、8月2日に再検査を行い、全員陰性。だが、UEFAが遠征の72時間前に義務付けている検査を8日に行ったところ、9日に2人の陽性が判明した、という経緯だ。
ブルサリコはリハビリ中で個人練習をしていたが、コレアは全体練習に参加していた。コレアがいつ感染したのかは不明だが、最悪の場合は4度、少なくとも1度の練習は、感染したままチームと一緒にこなしていたことになる。
残りの人員の陰性が確認されたことで、チームは10日午後に練習をし、予定されていた夜ではなく、翌11日にリスボン入りすることになった。
フェンラブラーダの二の舞は避けたい
だが、まだ試合前の最後のPCR検査をクリアしないと100%安心はできない。というのも、遠征した後になって陽性が出たフェンラブラーダのケースがあるからだ。
フェンラブラーダも陽性者を隔離し、残りの陰性を確認して遠征する、という今回のAマドリーと同じ措置を採った。
だが、到着後に陽性者が出て、最終的には28人の大量感染を出す事態になった。PCR検査の信頼度は感染初期には高くない。この時も練習と遠征参加者の中に“偽陰性者”が混じっていたと推測されている。
コレアが招集外になったことは、戦力的には痛い。もともとパスもドリブルもあるトップ下やセカンドトップ的な選手だが、今季は右サイドでカウンターを組み立てる中心的な役割を担っていた。彼がドリブルやパス交換で間を作ることで2トップが裏を突き、後方からMFが攻撃参加する時間を稼ぐことができていた。
だが、シメオネ監督とクラブ関係者の今の最大の心配事は、次のPCR検査の結果だろう。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。