以前お伝えした2部の大混乱が、やっと解決に向けて動き出した。
7月31日、サッカー連盟の競技委員会が、フェンラブラーダの選手たちの大量感染で延期されていたデポルティーボ対フェンラブラーダの開催を指示した。
2日後の開催が急に決定
試合中止にならなかったことは、フェンラブラーダにとっては朗報だった。試合に勝てば6位となってプレーオフの出場権を勝ち取ることができるだけでなく、感染発生にクラブの過失がなく、「不戦敗&2部B降格」といったペナルティを科されずに済むからだ。すでに選手とスタッフの大部分は治療を終えてマドリッドに帰っており、Bチームの選手を加えてでも試合をする用意を整えていた。
一方、デポルティーボにとっては悪い知らせだった。たとえこの試合に勝利しても残留できない彼らにとっては、唯一の望みだった「フェンラブラーダのペナルティ降格→代わりに残留」というシナリオが崩れたからだ。
だが、これらは問題の序章に過ぎなかった。問題のクライマックスは、8月3日午後になって、急に試合開催日が「8月5日夜」と発表されたことだ!
8月3日朝、デポルティーボの選手たちはPCR検査の場に現れなかった。その時点ではまだ試合日時が決まっておらず、選手たちはバケーション中でもあり、クラブは抗議の意味で検査ボイコットを宣言してもいた。それがこの急転直下の決定で、クラブは慌てて選手たちを呼び戻し始めた。
行き当たりばったりの決断
8月4日に再度予定されているPCR検査に何人の選手が間に合うのか? たとえ間に合ったとしても、果たして最終節の延期以来2週間練習もしていない彼らがプレーできる状態にあるのか? もっと言えば、コロナ感染で選手が半減したフェンラブラーダと、バケーションから呼び返されたデポルティーボが試合をして、それを公正なコンペティションと呼べるのだろうか?
現在暫定6位のエルチェは、フェンラブラーダがデポルティーボ戦で引き分け以上の成績を残せばプレーオフ出場権を失うことになる。真剣勝負でなければ彼らは決して納得しないだろう。
同時に、昇格プレーオフの日程も併せて発表された。ジローナ対アルメリア、エルチェまたはフェンラブラーダ対サラゴサの第1レグは8月13日、第2レグは16日。それらの勝者同士による決勝の第1レグは20日、第2レグは23日となった。
7月20日にリーグ戦の最終節が終わってから、エルチェの選手たちはプレーオフ出場が未定のまま、ジローナとアルメリアの選手たちは試合日程が決まらないまま、サラゴサに至っては対戦相手すら決まらないまま、練習を続けてきたのだった。
即興で、いい加減で、行き当たりばったり、という形容がぴったりの連盟とラ・リーガの今回の対応。近代化したリーガにこんなスペインらしさ(失礼!)が残っていたとは! これからまたひと騒動あってもまったく不思議ではない。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。