2025年6月末までの契約で、バイエルンがドイツ代表ドリブラーのレロイ・サネを獲得した。
今季の後半に入ると、コロナ禍も相まってほぼ連日のようにサネの獲得が報じられていた。6月10日の『シュポルトビルト』では、同じポジションのフランス代表ウインガーのキングスレイ・コマンが自身の見解を述べている。6月に24歳になったばかりだが、パリ・サンジェルマンやユベントス、そしてバイエルンでタイトルを獲得し続けてきたコマンの言葉には、すでにプロとしての成熟を感じさせた。
「サネが来ても問題ない」
8連覇を達成したバイエルンでウイングとして貢献したコマンは、自身の成長を振り返る。ケガが重なり、苦しんだ時期もあったものの、今は不安も感じていない。「常に1対1を仕掛けて、頻繁にファウルで倒される。打撲のようなちょっとしたケガは普通のこと」と話すまでになった。
得意なポジションに対するこだわりもなくなった。右利きのコマンにとっては、中央にカットインできる左サイドのほうがやりやすいそうだが、「肝心なのはピッチ上に立つこと」と語る。「相手が4バックの時はどちらでも変わりがない。でも、相手が5バックの時は左のほうがやりやすい。相手が守備的なので、スペースが狭い中央に入る時には利き足でボールを扱うほうがプレーしやすいからね」と具体的に説明する。
リーグの行方を決定付けたドルトムントとの天王山では、敵地で1-0の勝利を収めたものの、相手に押し込まれての辛勝だった。守備に奔走させられた試合を「あまり楽しくない役回りだったけど、仕事だからね。最終的に、勝つことが一番楽しいんだ」と笑いながら話し、王者バイエルンでポジションを獲得するメンタリティを垣間見せた。
「自分のプレーがうまくいかない試合では、戦うことでチームを助けないといけない。その術を学んだんだ」
ライバルとなるサネの獲得が話題になっても、フランク・リベリーやアリエン・ロッベンといったレジェンドたちとともに過ごしてきた経験から、受け入れ方も身についている。
「僕がバイエルンに来た時には、リベリーやアリエン・ロッベン、ダグラス・コスタがいた。リベリーやロッベンのようなレジェンドが僕の前にいたんだ。だからサネが来ても問題ない。クラブも僕の能力のことを理解してくれていると思うしね」と、クラブからの信頼も感じている。
CL前に4週間のブランクも「言い訳は許されない」
リーグ戦を制したバイエルンは、カップ戦の決勝、そしてUEFAチャンピオンズリーグと2013年以来の“トリプル”に挑戦しようとしている。だが、他国のリーグと比べ、再開時期が早かったことが裏目に出る可能性がある。
CLは8月にポルトガルのリスボンで集中開催される。ポカール決勝が終われば、チームは12日間の休暇に入る。4週間も試合感覚が空くことで、試合勘が鈍る可能性があるが、リバプールで昨季優勝監督となったユルゲン・クロップは『Sky』のインタビューで、この休暇が有利になる可能性も示唆する。
「大きな大会で優勝するには運も必要だ。決勝の大舞台では、チームのベストイレブンがそろっていなければならない。この数年のCL優勝チームがそうだった。この要素は比較的重要だ」とベストメンバーがそろうことを優勝条件に挙げる。その点で、4週間のブランクは、バイエルンがベストメンバーをそろえるための準備期間にもなり得る。
いずれにせよ、ドイツ王者のプライドを引っさげてバイエルンはCLに臨む。コマンは、「言い訳は許されない。僕らはCLで優勝したいんだ」と強い意気込みを見せた。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。