オランダ政府は6月24日、コロナの新たな出口政策を発表した。ディスコやナイトクラブといった例外を除けば、多くのことが間もなく解禁される。
キャパシティの3割程度
サッカーに関して言えば、7月1日から通常の練習メニューが組めるようになり、試合も行えるようになった。また、新シーズンはプロ、アマ問わず観客をスタジアムに入れて試合ができるようになった。それまでオランダでは、年内いっぱいは無観客で試合が行われることが確実視されていたため、今回の政府発表は国民にとって大きなサプライズになった。
ただし、1.5mのソーシャルディスタンスを保つため、スタジアムのキャパシティの3割ほどしか入場は認められない。来季のオランダリーグのシーズンチケットは販売開始早々、順調に売り上げを伸ばしており(そのほとんどは更新)、アヤックスは4万枚を突破した。
宿命のライバルに遅れをとっていたフェイエノールトはディック・アドフォカートのサポーターに対する檄が効き、2万6976枚(6月27日13時時点)と右肩上がりの追い上げを見せている。
KNVB(オランダサッカー協会)プロサッカー部門責任ダイレクター、エリック・フッデなどの「今回の政府発表に大変喜んでいる」というポジティブな声に混じり、どのように入場者を選別するのか困難と失望を伴う作業があるため、アヤックス・サポーターズクラブのように「無観客か、制限なしの有観客か、ハッキリしたほうがよかった」という声も少なからずあった。
行動の制限を疑問視する声も
また、サッカーに関わらず大声で一斉に歌うこと、叫ぶこと、シュプレヒコールは禁止されたため、政府会見では「自分の応援しているチームがゴールを決めた場合、どうしたらいいのか?」という質問が記者から飛び、マルク・ルッテ首相は「ホーンをスタジアムに持っていくか、『よっしゃ』と小声で叫ぶ程度に留めること」と答えた。
「大声で歌うこと、叫ぶことはウイルスの拡散につながる。ベルガモのスタジアムは多くのウイルスが広がる場所になった」(ルッテ首相)
しかし、「サッカーは“エモーショナルなスポーツ”という側面がある」「自分の応援するチームが0-2のビハインドを追いかけて、残り10分で逆転しそうな時、観客がおとなしいままなわけがない」「そもそも、どうやってファンの歌や応援をコントロールするのか、実務的な問題がある」とルッテ首相の発言に戸惑いを隠せないファンや関係者もいる。
ともかく、オランダ政府から「スタジアムに観客を動員してもいい」とお墨付きを得たことは、オランダサッカー界にとって大きな前進だ。
オランダリーグの放映権ホルダーであるフォックスは「8月1日からほぼ毎日、プレシーズンマッチを2試合放映する」と発表した。8月28日にオランダ2部リーグが、9月12日にオランダ1部リーグが開幕し、その合間にオランダ代表がホームでネイションズリーグを2試合戦う(9月4日対ポーランド、7日対イタリア)。
第2波を想定し、「コロナが蔓延した地域の試合は、他のスタジアムで実施することもできる」という柔軟なルールが設定された。また、デ・クラシケル(アヤックスとフェイエノールトの対戦)などのビッグゲーム、トゥエンテとヘラクレス、フローニンゲンとヘーレンフェーンなどのダービーマッチは入場制限が解ける可能性の高い後半戦に組まれると見られている。日程は7月22日に発表される予定だ。
Photo: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。