イングランド・フットボール界の未来をサポートするパーソナルトレーナーが「波乱万丈すぎる人生」として注目を浴びている。
そのトレーナーとは、元ブリストル・ローバーズのマイク・“ボーツ”・ボーテング(28歳)だ。過去に2度も懲役刑を受けながら、現在は名だたる選手たちの個人トレーナーを務めている。彼の顧客リストには、ドルトムントで活躍するジェイドン・サンチョやトッテナムのライアン・セセニョンといった、未来のイングランド代表チームを想像させる豪華な顔ぶれが並んでいる。
八百長と麻薬取引で2度の投獄
国営放送『BBC』のHPに掲載された特集記事によると、ボーテングは2013年に八百長詐欺の罪で16カ月間も投獄され、フットボール界から生涯追放を言い渡された。「八百長に関してはスケープゴートにされた。私が罰せられることを世間が求めていたんだ」とボーテングは振り返る。
八百長を紹介されてミーティングに参加しただけと主張しながらも、今では「他の人が同じ過ちを犯さないように協力したい」と前を向いている。
さらに、イングランド・フットボール協会から永久追放を受けた際には「自分はどうすればいいんだ……」とショックを受けたという。それもあってか、2015年には麻薬取引の罪で2度目の懲役刑を受けたそうだ。
しかし、そういったすべての経験が今に生きているようだ。パーソナルトレーナーの資格を取ったのも刑務所の中。さらに牢屋の中で知り合った友人と一緒にポッドキャストの番組を制作し、塀の向こう側の生活を伝えている。
トレーナー兼用心棒に
パーソナルトレーナーとしては、世界的な若手選手たちを公私ともにサポートするようになった。それも単なる個人トレーナーではない。“用心棒”のような仕事もしており、選手のバカンスに同行して面倒まで見るという。
「夜間の外出や休暇中の旅先に同行することもある。私は“兄貴的な存在”として彼らと一緒に過ごしている。彼らも私がいると安心するみたいだ。私だって楽しいし、ただで旅行に行けるので一石二鳥さ」
ボーテングは自分を受け入れてくれた若手選手たちに感謝もしている。「彼らは(前科があることに)偏見を持たない。本当に凄いことだ。それが私のモチベーションになる。彼らの模範であろうと思うのさ」
そんな“経験豊富”なボーテングがいるのだから、イングランド代表の未来は安泰だろう。
Photo: Getty Images
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Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。