新型コロナウイルス感染症拡大による中断から6月20日に再開するセリエAだが、シーズンが完遂できるかの見通しが再び不透明なものとなった。選手やスタッフに感染者が出た場合、現状ではチームともども14日間の隔離措置を取らなければならないが、その安全基準が緩和されないまま再開を迎えることになるからだ。
「完全隔離は感染者だけ」に緩和
感染予防策を定めたイタリア共和国の法令では、感染者およびその濃厚接触者には14日間の自主隔離措置が課せられている。
サッカーもそれに沿い、感染者には14日間の隔離措置が取られるとともに、チームも同期間に合宿を張って外界から隔離させなければならないというルールが設定されていた。だがその間、チームは試合をすることができない。イタリアに先立って再開したドイツではこのようなルールはなく、イタリアサッカー連盟(FIGC)は緩和を求めた。
専門者委員会はドイツの例を参考に再度検討を進めた結果、試合の続行に関しては許可を出した。14日間の完全隔離は感染者だけ。選手とスタッフには合宿が課されるも、試合当日の朝に即効性のあるPCR検査を行い、4時間前までに感染が確認されなければ試合に出ることも可能とした。
同委員会はFIGCに対して6月16日までに書簡を送り、「(隔離を求めた)法令とは相容れない部分はあるが、国全体の感染ペースが収まってきていることも鑑み、医科学的な観点では完全に容認できるもの」との見解を正式に伝えた。
スポーツ大臣が専門者委員会の見解に難色
ところが、この「法令とは相容れない部分がある」に難色を示した閣僚がいた。スポーツ省のビンチェンツォ・スパダフォーラ大臣は16日夜のテレビ番組で「法律を変えなければならない。追加で修正条項を出すか、それとも法令自体を改定するかだ。極力早めに解決したいが、いずれにしても20日までにはできないと思う」などと言い出したのだ。
これには、サッカー関係者も戸惑いを隠せなかった。FIGCのガブリエレ・グラビーナ会長は「サッカー選手には頻繁に検査が施されることになるので、(検査をしていないことが前提となっている)一般市民の濃厚接触者とは異なるのではないか。法令との問題が生じるとは思えない」と首を傾げた。
早急な解決が求められることである。16日、セリエBのベネツィアは選手1人が無症状ではあるがウイルスに感染していたことを発表した。20日にはポルデノーネ戦が予定されているが、現状では選手全員に隔離措置が課せられるため、試合の実行が難しくなる。
17日付の『コリエレ・デッロ・スポルト』は「委員会が見解を出したのが11日だが、この日に書面の通達が行われていれば修正条項発布などの措置を取る時間はできたはずだ」と批判的に報じた。
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神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。